月光仮面 絶海の死斗【1958年(昭和33年)/東映】

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1958年(昭和33年)公開の東映映画、「月光仮面」シリーズの第二作目『月光仮面 絶海の死斗』。

シリーズ一作目『月光仮面』の続編に当たります。

本作でも中山博士(宇佐美淳也)とその娘・あや子(峰博子)の身に危険が迫りますが、田坂(永田靖)の過去の重大な秘密が明かされるなど、驚きの展開が待ち受けています。
そして、どくろ仮面の正体とは…!

 

作品情報

月光仮面 絶海の死斗
【公開】1958年(昭和33年)8月6日
【時間】51分/モノクロ
【配給】東映
【監督】小林恒夫
【原作】川内康範(「少年クラブ」連載 ラジオ東京テレビ放送劇)
【出演】大村文武/峰博子/小宮光江/宇佐美淳也/柳谷寛/若水ヤエ子/佐々木孝丸/永田靖/長谷部健/原泉/原国雄/須藤健/沢彰謙/山本麟一/大東良/高田博/萩京子/藤井珠美/田川恒夫/滝沢暲和/轟謙二/冨士山龍/大筆兵部/山本緑/江島讓/伊吹新/小島謙太郎/フォア・コインズ合唱団(三沢郷/小山欣一/風野三郎/坤野英一)

あらすじ

赤星博士(佐々木孝丸)と田坂(永田靖)の提案により、中山博士(宇佐美淳也)は田坂の別荘に身を隠すことになる。
どくろ仮面は田坂の過去の重大な秘密を握っており、どくろ仮面に脅された田坂は、中山博士を裏切って、どくろ仮面に博士の情報を売り…。

 

 

ロケ地

神宮外苑

冒頭、前作の振り返りで、神宮外苑のシーンが登場。
(※詳細は、前作『月光仮面』の「ロケ地」の項をご覧ください。)

 

三菱倉庫本社ビル

ユリ(小宮光江)が取り調べを受けている警察署として、前作に続いて登場するのが、日本橋の三菱倉庫本社ビル。
今回は、バテレンお由(原泉)が警察署にやってくるシーンで、入口付近が映ります。

三菱倉庫本社ビルの詳細については、前作『月光仮面』の記事の「ロケ地」「美しい建築」の項をご覧ください。

 

東海大学 代々木キャンパス 2号館

タイガー(長谷部健)の入院先の病院として登場する建物は、東海大学の代々木キャンパス2号館。
本作が公開された1958年(昭和33年)に完成したばかりの、できたてホヤホヤの建物です。
病室のシーンについては不明ですが、タイガーが銃撃された後のシーンは、おそらくこの建物で撮影されています。

タイガーを撃った黒マスクの男(山本麟一)&それを追う祝(大村文武)は、銃撃戦を繰り広げながら螺旋スロープ&階段を駆け上がり屋上へ。
屋上最上部の鉄塔のところまで黒マスクを追い詰めるも、黒マスクは転落してしまう…。
中庭へと降りてきた祝でしたが、転落したはずの黒マスクの姿は消えていました。

完成したばかりの校舎でこんな惨劇が起きていたとは、東海大学の在校生&卒業生もビックリでしょう(笑)

建物の詳細については、「美しい建築」の項をご覧ください。

 

茅ヶ崎ゴルフ場

田坂(永田靖)の別荘として登場する建物は、茅ヶ崎ゴルフ場(現:GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス)のクラブハウス。
劇中では、田坂の別荘がある場所は「カブト岬」ということになっています。

コースは映っておらず、クラブハウスとその周辺の道路が少し映ります。

茅ヶ崎ゴルフ場のクラブハウスの詳細については、「美しい建築」の項をご覧ください。

 

晴海埠頭

どくろ仮面からの「設計図を月島の第十三号波止場に届けろ」という挑戦状を受けて、あや子(峰博子)たちが向かったのが晴海埠頭。
よく見ると、あや子のバックに晴海団地がチラリと見えます。

対岸(豊洲)に見えるのは、左側の大きな煙突がある施設は、東京電力の新東京火力発電所。
右側の大きなガスホルダーなどが並ぶ施設は、一作目『月光仮面』でも映っていた東京ガス豊洲工場です。

 

剱崎

終盤、どくろ仮面一味と警察の銃撃戦が行われる場所は、三浦半島にある剱崎。

剱崎へやってきたどくろ仮面ご一行様は、まずは夫婦岩のあるエリアの、「スベリ台」や「トイレ下の磯」と呼ばれているあたりをうろつきます。
そして、夫婦岩の裏側へ…剱崎灯台の下にある「竜宮祠」の鳥居も映ります。
激しい銃撃戦が展開されるのは、夫婦岩と剱崎灯台の間のエリアです。

すぐ近くにある剱崎灯台などの建造物は一切映っておらず、「謎の無人島」感が醸し出されていてカッコイイです。
かなり計算されて撮られていると思います。

 

 

主題歌・挿入歌

主題歌

☆「月光仮面は誰でしょう」近藤よし子/キング子鳩会
☆「月光仮面の歌」三船浩(※劇中での使用なし)

(☆印:OPにクレジットがある曲)

 

挿入曲

  • 「七つの子」童謡(歌:フォー・コインズ)
  • 「乙女の祈り」バダジェフスカ

 

楽曲使用シーン

  • 「月光仮面は誰でしょう」
    ・タイトルバックで流れる。
    ・どくろ仮面一味に連れ去られた中山博士(宇佐美淳也)とあや子(峰博子)を月光仮面が追うシーンで流れる。

  • 「七つの子」
    ・レストランのステージで、フォー・コインズが歌う。

  • 「乙女の祈り」
    ・オルゴールから流れる。

 

美しい建築

東海大学 代々木キャンパス 2号館

タイガー(長谷部健)の入院先の病院として登場する、東海大学の代々木キャンパス2号館。

設計は、当時の東海大学理事で工学部建設工学科の主任教授でもあった、建築家の山田守。
1958年(昭和33年)竣工。
真上から見るとX型、正面から見たときの美しい曲線に、屋上の塔が印象的な造りの建物です。

この建物のデザイン、実は旧東京厚生年金病院(現存せず)によく似ています。
旧東京厚生年金病院は、設計が山田守建築事務所、施工は鹿島建設。 
鹿島建設の資料によると、1954年(昭和29年)10月竣工。
こちらも山田守の設計なんですね。

旧東京厚生年金病院は、真上から見るとY字型なのですが、正面から見た形は、代々木キャンパス2号館と似ています。
さらに、内部の螺旋スロープなんかも、よく似ています。
なので、代々木キャンパスの2号館を「ここは病院ですよ」といって出されても、まったく違和感なしです。

本物の病院内で銃撃戦を撮るのはさすがに無理でしょうから(笑)、病院の設定で撮影するのにはとても良い建物を使っていると思いました。

 

茅ヶ崎ゴルフ場 クラブハウス

田坂(永田靖)の別荘として登場する、茅ヶ崎ゴルフ場(現:GDO茅ヶ崎ゴルフリンクス)のクラブハウス。
現在のクラブハウスの建物ではなく、旧クラブハウスです。
ハウス設計は山下寿郎設計事務所、ハウス施工は亀井土建株式会社。
(ちなみに、コース設計は上田治、コース施工は安達建設株式会社ですが、コースは映っていません。)

茅ヶ崎ゴルフ場は、本作公開の前年、1957年(昭和32年)11月に開場したばかりで、クラブハウスを見ても、まだ新しい建物であることが画面越しからもなんとなくわかると思います。
室内のシーンはおそらくセットかなにかだと思いますが、美しい外観と、建物からの眺めをしっかりと確認することができます。
眼下に海が広がるバルコニーからの壮観な眺望に、心奪われます。
江ノ島とおぼしき島もうっすらと映り込んでいます。

江ノ島が映り込んでいることと、ゴルフ場っぽい周辺の風景から、茅ヶ崎ゴルフ場ではないかと推測できました。
茅ヶ崎ゴルフ場については、当時の写真資料が全くといってよいほど見つからず、検証をするのが少し大変だったのですが、クラブハウスの写真をどうにか1枚だけ見つけることができ、茅ヶ崎ゴルフ場のクラブハウスであると確認ができました。

 

 

熱狂!歌唱シーン♪

フォー・コインズ

フォー・コインズは、男性4人組のコーラスグループ。
(本作でのクレジットはフォア・コインズ合唱団。)

レストランのステージで、童謡「七つの子」をしっとりと聴かせます。
前作の賑やかな楽団のステージとはまた違った魅力を振りまきます。

このシーン、7人の可愛い女の子たちが、仲良く並んでアイスを食べながら「七つの子」の歌を聴く…という、なんとも可愛らしい演出。
フォー・コインズの優しい歌声と、可愛い子どもたちの姿に癒される歌唱シーンです。

 

戦争の記憶

研究所の所長である田坂(永田靖)が、戦時中、軍の機密を対戦国に売り渡し、偽情報を政府に売り込んでいたという、とんでもない売国奴だったことが発覚。
なかなか衝撃の展開です。

この時代の特撮ヒーローものには、戦時中の話が絡んでいることも多いのですが、本作もそのひとつ。

戦争と平和、愛国心についても考えさせつつ、物語をみせる。
この時代のヒーローものって、なかなか奥が深いのです。

 

キラリ☆出演者ピックアップ

長谷部健

タイガーを演じている長谷部健。
父親は中野英治、母親は英百合子と、両親とも映画スター。
どちらにも似ていますね、表情によって中野英治にも英百合子にも似ているように見えます。
カワイイ系のお顔なので、今の時代でも女子ウケが良さそうな俳優だと思います。
当時30歳ですが、だいぶ若く見えますね。

本作出演時は、東映に移籍したばかりの時期だと思います。

タイガーのドラマに胸を打たれた人も多いのでは。
月光仮面シリーズでは四作目の『月光仮面 怪獣コング』にも出演しているので、ぜひ注目を。

 

 

【映画レビュー】これぞ日本のヒーロー!

本作は、一作目『月光仮面』の続編です。

タイガー(長谷部健)が改心したかと思えば、田坂(永田靖)がとんでもない悪党だったことが発覚。
めくるめく展開に、最後までワクワクが止まりません。

特に、タイガーをめぐるストーリーはいいですね。
月光仮面からタイガーへの励ましの手紙には胸が熱くなり、込み上げてくるものがあります。
それなのに、それなのに…涙。

どくろ仮面の正体は意外な人物…なのですが、第一部にあたる一作目~本作にかけてよくよく見てみると、かなり怪しい動きをしている人物が一人いることに気がつきます。
私は初見ではまったく気づかず、見事に騙されましたよ。

で、ここからが一番大事なところだと思うんですが。

五郎八(柳谷寛)が敵だったタイガーに対して「俺たちは同じ日本人じゃないか」と語りかけるシーンがあります。
前作でも、松田警部(須藤健)がユリ(小宮光江)に対して「お前も日本人じゃないか」と話すシーンがありました。
この「日本人」という単語に、川内康範の愛国心が凝縮されていると思うのです。
(※原作者の川内康範は、本作の脚本も手がけています。)
敗戦によって傷ついてしまった日本人の誇りをどうにか取り戻そう!という気概が感じられるんですよね。
田坂が実は売国奴だった…という展開も、そんなメッセージを強調してくれています。

だから、月光仮面って単なる勧善懲悪のヒーローではないんですよね。
これは月光仮面に限らず、川内康範の作品には共通していますが、もっともっと、日本人にとって深い意味を持っているヒーローだと思うんです。
今のヒーローにはない、強烈なメッセージ性があります。
今こそ、こういう作品がたくさん観られるべきだと思うのです。

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月光仮面 絶海の死斗 【DVD】
【監督】小林恒夫 【出演】大村文武/峰博子/小宮光江/宇佐美淳也 ほか
 

 

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