ひろしま【1953年(昭和28年)/北星映画】

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1953年(昭和28年)公開の映画『ひろしま』。

出演は広島市出身の月丘夢路など。
ほかにも、実際に原爆で被爆された方々など、広島の一般市民8万8千人以上がエキストラとして出演しています。

岩波書店から出版された「原爆の子 広島の少年少女のうったえ」(編:長田新)をもとに、原爆投下による広島市の惨状、被爆者たちの苦しみを、記録映像を交えながら描きます。

 

作品情報

ひろしま
【公開】1953年(昭和28年)10月7日
【時間】104分/モノクロ
【企画 製作】日本教職員組合
【製作者】日本教職員組合/映画製作委員会
【配給】北星映画
【監督】関川秀雄
【出演】広島原爆被害者・広島各労働組合員・園兒・兒童・生徒・学生・PTA・一般市民 延八万八千五百余人/山田五十鈴/岡田英次/加藤嘉/月丘夢路/原保美/河原崎しづ江/岸旗江/利根はる惠/神田隆/月田昌也(新人)/徳永街子(新人)/薄田研二/三島雅夫/花沢徳衛/信欣三/永田靖/龍岡晋/河村弘二/佐脇一光/髙野恭明/松山梨繪子/町田いさ子/小沢眞弓/村瀬ひろみ/松山英太郎/河原崎健三/岩見十鯉男/亘征子/南雅雄/石島房太郎/協力肇/山田好一/戸田春子/島田屯/望月伸光/下條正己/島田敬一/織田政雄/鈴木茂/福地悟朗/野添健/田辺若夫/髙野二郎/忍節子/梅津栄/後藤田由子/田所千鶴子/田村保/米倉栄/髙杉公/和田潜/小野武夫/片岡暉/加藤浩子/浮田佐武郎
【協力】廣島市/日本労働組合総評議会/広島県労働組合会議/原爆の子友の会/原爆被害者の会/株式会社 広島電鉄/株式会社 藤田組

あらすじ

広島市内のある高校の授業中、ひとりの女子生徒が倒れた。
女子生徒・大庭道子は、原爆で被爆し、白血病を患っていたのだった。
物語は、忌まわしいあの日の広島の記憶へと遡る…。

 

 

ロケ地

原爆ドーム

劇中に何度も登場する原爆ドーム。
知らない人はいないでしょう。
もともとは広島県産業奨励館という建物で、物産の展示・販売などの業務を行っていた施設でした。

「原爆一号」と呼ばれた吉川清さんの土産物屋も登場し、吉川さんがケロイドを見せる映像も流れます。

 

日本基督教団 広島流川教会

「戦後の広島には立派な教会がたくさん建ちました」という語りと一緒に教会が映る。
こちらの教会も原爆で被爆しましたが、戦後修復されました。

 

平和大橋

流川教会と同じく、語りと一緒に映像が流れる。

 

平和記念館・平和記念公園

同じく、語りと一緒に平和記念館の映像が流れる。
平和記念公園の原爆死没者慰霊碑も映ります。

 

住友銀行広島支店

同じく、語りと一緒に映像が流れる。
支店の入口付近、死の人影が残る部分について触れられています。

 

広島赤十字病院前

大学前(日赤病院)のバス乗り場が映るシーンで、奥に映っている建物は広島赤十字病院。

 

広島市立宇品小学校

旧制広島一中の校舎という設定?で出てくる建物は、おそらく宇品小学校だと思います。
広島一中の生徒たちが、校庭で話を聞いてから、偶数組の先発で建物疎開作業へと向かいます。

 

大芝

下山恵子役で出演している徳永街子の手記によると、原爆投下後に火に包まれた街のなかを人々が逃げまどうシーンは、大芝の川べりに建てられたセットにガソリンをかけて燃やして撮影されたようです。
徳永さんの手記には、他にもロケの様子についていろいろと書かれていて、映画『ひろしま』のロケの様子を知るのに貴重な大変興味深い資料だと思います。

<参考文献>
徳永街子.「ひろしま」の撮影から.新しい世界.第71号.1953年9月.P77-78

 

己斐駅(?)

幸夫が妹の洋子を探しに駅に行くシーンは、己斐駅での撮影か???
窓の外に「こひ」と書かれた駅名標のようなものが見えます。

 

似島学園

戦災孤児となり妹・洋子とも生き別れてしまった幸夫(月田昌也)が世話になっていた児童養護施設。
復員してきたおじ(花沢徳衛)が似島学園まで幸夫を引き取りに来る。

 

宮島

似島学園を脱走した幸夫たちが訪れるのが宮島。
厳島神社の大鳥居の周辺を歩き、お土産屋で売られている骸骨の置物を眺めます。

 

中央百貨店付近

似島学園のシーンの直後、中央百貨店(後に天満屋広島店になる)の付近が映ります。
近くにあった富士銀行などの建物も確認できます。

 

太陽館

太陽館は、的場町にあった映画館。
幸夫が太陽館の前で『チャップリンの殺人狂時代』の看板を眺め、映画を観るために太陽館へ入っていきます。

 

 

主題歌・挿入歌

挿入歌

  • 「軍艦行進曲」(インストのみ)
  • 「お山の杉の子」童謡
  • 「鯉城の夕」旧制広島一中 校歌
  • 「君が代」国歌

 

楽曲使用シーン

  • 「軍艦行進曲」(インスト)
    ・「この頃、広島の街には軍艦マーチの曲がよく聞こえます」という語りのバックに流れる ~ 戦時中の回想が始まるところまで。
    ・街中(中央百貨店付近)で流れている。

  • 「お山の杉の子」
    保母(利根はる惠)と子どもたちが歌う。

  • 「鯉城の夕」
    川に逃げてきた広島一中の先生(原保美)と生徒たちが、先生の「校歌を歌って頑張ろう」という呼びかけで歌う。

  • 「君が代」
    川に逃げてきた第二県女の先生(月丘夢路)と女学生たちが、歌いながら川に沈んでいく。

 

MEMO

広島県立広島第一中学校(旧制広島一中)は、現在の広島県立広島国泰寺高等学校。

広島県立広島第二高等女学校(第二県女)は、1948年(昭和23年)に「広島県広南高等学校」となりますが、その翌年には高校再編のために統合され閉校、統合された学校は現在の広島県立広島皆実高等学校となります。
大庭町子(松山梨繪子)が着ている服の左腕部分をよくよく見ると「学徒隊 第二縣女」と書かれているので、川に沈んだ女学生たちは第二県女の生徒だということがわかります。

 

 

劇中に登場する映画

『チャップリンの殺人狂時代』

『チャップリンの殺人狂時代』は、1947年(昭和22年)公開のアメリカ映画。
監督・主演はチャールズ・チャップリン。
日本公開は1952年(昭和27年)9月2日。

幸夫(月田昌也)が映画館「太陽館」の前で『殺人狂時代』の看板を眺め、この映画を観るために太陽館へと入っていきます。

映画を観た後、幸夫はちょっとした事件を起こして警察に厄介になります。
戦争というものが幸夫の心に落とした暗い影。
『殺人狂時代』の有名な台詞を引用して語られる幸夫の悲痛な叫び、北川先生(岡田英次)への訴えは、胸に迫るものがあります。

殺人狂時代 Monsieur Verdoux 【Blu-ray】
【監督・出演】チャールズ・チャップリン
 

 

なつかしの文学・漫画・雑誌

「0の暁」

高校の授業で生徒たちが聞いているラジオから流れているのは、「0(ゼロ)の暁」の朗読。
「0の暁」の著者は、アメリカのジャーナリスト、ウィリアム・レナード・ローレンス。
日本では1950年(昭和25年)1月に創元社から出版されています。
翻訳は崎川範行。

著者のW.L.ローレンスは実際に長崎への原爆投下の際に同行取材していて、その体験を含めて、アメリカの原子爆弾計画について記録したのがこの作品「0の暁」です。

劇中で朗読されているのは、「0の暁」のなかの「第三部 決戦」より、第14章・第15章・第17章を編集したものと思われます。

 

「僕らはごめんだ 東西ドイツの青年からの手紙」

授業中に河野から井上へと回ってくる本は、「僕らはごめんだ 東西ドイツの青年からの手紙」(篠原正瑛 訳編)。
1952年(昭和27年)4月に光文社より出版されたものです。
本の内容は、編著者の篠原氏とその友人のドイツ人たちとの文通を編纂したもの。

大庭道子の病室で河野が朗読するのは、1951年11月19日に西ドイツ・ブレーメンの青年から篠原氏へと送られた手紙の部分。
白色人種であるドイツ人の視点から綴られた手紙の内容は、非常に興味深いものであります。

 

 

地域のお祭り・イベント

広島平和祭

広島平和祭の記録映像が劇中に挿入されます。
広島平和祭は、1951年(昭和26年)からは平和記念式典となり、みなさんもご存知の通り、毎年8月6日に式典が行われています。

昔の平和祭の映像を見られるのは大変貴重なのではないでしょうか。

 

戦争の記憶

「原爆の子 広島の少年少女のうったえ」

本作のもととなった「原爆の子 広島の少年少女のうったえ」(編:長田新)は、小学生から大学生が綴った原爆の体験についての作文を集めた文集です。
1951年(昭和26年)に、岩波書店から出版されています。

子どもたちが綴った生々しい体験談の数々は、原爆の恐ろしい被害や、あの日の広島市の様子を知るのに大変貴重な資料だと思います。

「原爆の子」に収められている作文に書かれているエピソードも、劇中に出てきます。

原爆の子 広島の少年少女のうったえ:上 (岩波文庫)
【編】長田 新
 
原爆の子 広島の少年少女のうったえ:下 (岩波文庫)
【編】長田 新
 

 

国策スローガン

劇中に登場した戦時下の国策標語をまとめました。

  • 「一億火の玉だ」
  • 「輸送報国」

いずれのスローガンも、街中を走る広島電鉄の車両に掲げられています。

 

キラリ☆出演者ピックアップ

広島市民

素晴らしい俳優陣がたくさん出演している本作ですが、やはり一番にとりあげるべきは、広島市民でしょう。
OPのクレジットにもありますが、本作には延べ8万8千人以上の広島の一般市民が無報酬でエキストラとして出演しています。

「原爆一号」と呼ばれた吉川清さんが背中のケロイドを見せる映像や、原爆乙女など、実際に被爆された人たちもたくさん登場します。

レビューにも書きましたが、出演した市民のなかには実際にあの日・あの出来事を経験した人たちも少なくないわけで、その地獄のような苦しみと向き合いながら参加されたということが、どれほどのことか。
そのような方々が立ち上がってくれたからこそ、この映画にはたくさんのエネルギーが、魂が注ぎこまれ、これだけの作品を作ることができたのだと思います。

 

 

【映画レビュー】あの日の広島の悲しみ、その後の広島の苦しみ。

日本人なら一度は観るべき作品として挙げておきたいのが、今回紹介する映画『ひろしま』です。
長いこと封印されてきたこの作品、現在では様々な媒体で鑑賞することができるので、本当に良い時代になったものだと思います。

本作に出演している俳優陣のなかには、広島にゆかりのある人、原爆とは無関係ではない人たちがたくさんいます。
広島市出身の月丘夢路は無報酬で出演。
仁科博士役の薄田研二、参謀役の永田靖、保母役の利根はる恵は、広島で被爆した移動演劇隊「桜隊」に所属していましたが、それぞれ事情により広島には行ってなかったため、難を逃れています。
(永田靖は、桜隊が広島へ行く前に赤紙が届いた。)
薄田研二は、同じく桜隊に所属していた息子の高山象三を原爆で亡くしています。

物語は、広島市内のある高校の授業風景から始まります。
被爆し白血病を発症した女生徒・大庭道子が、授業中に鼻血を出して倒れます。
同じクラスのなかでも、被爆した子とそうでない子たちの温度差が激しく、被爆した子たちは陰で「ピカドン組」などと囁かれ、教室内に差別的な空気が漂います。

クラスの男子・河野が訴える、被爆した人間の悲痛な叫び。
「(被爆者の苦しみについて)広島市民の大部分の人が知らない」
「原爆の恐ろしさと、あの非人道的なことを、世界の人たちに叫ぶ前に、まず日本人にわかってもらいたいんです。いいえ、それよりか、広島の人たちに知ってもらいたい」
被爆者は、被爆した苦しみだけでなく、いかに多くのものと闘わなければならなかったのか。
そして、広島・長崎の悲劇から数十年後には、今度は別の形で、福島の人たちが放射能の恐怖に苦しむことになります。
しかし、ここでもまた同じような差別が繰り返される。
同じ日本人が何もわかっていない。
そして、歴史はまた繰り返される…。
日本人の精神レベルは、この数十年でまったく変わっていない(というか、むしろ劣化しているようにすら思える)という事実が、ただただ悲しいです。

「僕らはごめんだ 東西ドイツの青年からの手紙」(篠原正瑛 訳編)からの引用で、「日本人が有色人種だから」という話が出てきますが、まぁそうなんだろうな、と。
広島・長崎への原爆投下は、目に見える被害のほかにも、目には見えない根深い様々なものを炙り出したのではないでしょうか。

チャップリンの『殺人狂時代』の有名な台詞を引用しての幸夫(月田昌也)の悲痛な訴えもまた、心に響きます。

被爆者たちが地獄の苦しみを味わうなかで、何事もなかったかのようにキラキラと輝きを放つ穏やかな海の美しさが印象に残ります。
愚かな人間が下した鬼畜の所業とは裏腹に、自然はただ美しさをたたえて、何かを慰めるように、ただそこに在る。
人間とは一体何なのだろう?と、考えずにはいられないのです。

病院の庭に植えられた大根の種が芽を出すシーンもまた、とても印象的です。
「芽なんか出るもんかい」と言っていた被爆者のおじさん(織田政雄)が、こっそりと様子を見に行き、大根の芽が出てるのを発見する…。
人間、どんなに絶望のどん底に突き落とされても、やはり心のどこかでは希望を見いだしたいと願っているものなのです。
この心境はいかほどであろうかと考えただけで、涙が溢れそうになります。

鐘が鳴る中、何万もの広島市民が原爆ドームへと向かうシーンは圧巻。
これほどの規模で市民エキストラが協力した作品を、わたしは他に知りません。
参加した市民のなかの多くの人たちは、実際にあの忌まわしい出来事を体験しているわけで、この映画に出演されたひとりひとりの生きてきた道の背後にあるものを思うと、何も言葉が出ません。
演じるにあたって、あの悲惨な出来事とふたたび対峙しなければならなかったでしょうし、それはとてつもない苦しみだったと思います。

ラストは、同じく関川秀雄監督の『日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声』(昭和25年)と同じように、立ち上がった死者の魂たちが、ゆらゆらとどこかへと向かう画で締められます。

数万の広島市民の思いとともに作られた名作。
永く語り継がれ、日本だけでなく、世界で多くの人たちに観ていただけることを願ってやみません。

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