新婚のろけ節【1953年(昭和28年)/大映】

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1953年(昭和28年)公開の大映映画『新婚のろけ節』。

主役の夫婦に三田隆&三條美紀、三田隆の同僚に船越英二、その妻に久保幸江を迎え、二組の新婚夫婦をめぐるアレコレをコメディタッチで描きます。

新婚ホヤホヤ、おのろけ放題の二組の新婚カップル。
しかし、社長から命じられた任務によって、彼らの幸せな新婚生活に危機が訪れる…。
果たして、元の幸せな夫婦関係を取り戻すことは出来るのか…!?

 

作品情報

新婚のろけ節
【公開】1953年(昭和28年)3月5日
【時間】85分/モノクロ
【配給】大映
【原作】夏目咲太郎(「平凡」所載 “新婚サラリー節”より)
【監督】田中重雄
【出演】三田隆/三條美紀/船越英二/久保幸江(コロムビア)/進藤英太郎/荒川さつき/南田洋子/澤村貞子/神楽坂はん子(コロムビア)/高倉敏(コロムビア)/大泉滉/小川虎之助/多々良純/左卜全/潮万太郎/宮島健一/高品格/海野光一/大村猛/杉森麟/加原武門/橘喜久子/藍三千子/小林美保/目黒幸子/藤田慶子/浜路眞千子/遠藤哲平/早川雄二/丹羽茂/志保京助/宮田悦子/須田喜久代/國弘道子

あらすじ

会社員の大木(三田隆)は、新婚ホヤホヤの幸せ絶頂。
同僚の平野(船越英二)もまた同じである。
そんな二人が、ある日突然、社長(小川虎之助)から呼び出され、九州からやってくる会社社長・権田(進藤英太郎)の接待をしろと命じられる。
連日の接待で帰宅が遅くなり、夫婦仲が険悪になる二人。
一方、接待相手の権田の方はというと、実は本当の目的は人捜しのために東京に来たのだと言いだし…。

 

 

ロケ地

熱海

主人公の大木(三田隆)&マリ子(三條美紀)夫妻が新婚旅行で熱海に行ったという設定らしく、タイトルバックで熱海駅の駅名標・熱海の夜景・熱海つるや旅館「パリー風呂」の映像などが流れます。
つるや旅館は、2001年に閉館した「つるやホテル」の前身。
「パリー風呂」は、つるや旅館の名物だったようで、映像にも映っている美しい壁面アートは、東郷青児が手がけたものです。

 

世田谷区代田二丁目

マリ子ときぬ子(久保幸江)が買い物したり、大木と平野(船越英二)が通勤で通る道のあたりの住所は、世田谷区代田二丁目。
(※当時の住所なので、現在の代田二丁目とは範囲が異なります。)
通り沿いにある複数のお店について調べたところ、当時の代田二丁目付近と確認できました。

 

京橋(橋)

富子(沢村貞子)が大木を街中で見かけるシーン。
富子が渡っている橋は、今はなき京橋です。
京橋側から銀座側へ歩いて渡っています。
村山(多々良純)が入った公衆便所の入口付近には、「きやうはし」と書かれた京橋の親柱の姿もしっかりと見えます。

 

大倉本館前

月賦住宅の申し込みのため日本電建へ行ったマリ子が村山と一緒に建物から出てきますが、この建物は銀座二丁目の大倉本館。
ただし、日本電建は実際には銀座七丁目にあったようなので、大倉本館の建物(外観のみ)は撮影のために借りただけと思われます。

マリ子が村山のプラカードを持たされて立っている場所は、大倉本館(銀座二丁目)とは道路を挟んですぐ隣にあった、日本ナショナル金銭登録機(銀座三丁目)の建物の前です。

 

 

主題歌・挿入歌

主題歌

☆「こんな心持ち察してね」久保幸江/高倉敏
☆「そんなのないわよ」久保幸江

(☆印:OPにクレジットがある曲)

 

挿入歌

  • 「軍艦行進曲」軍歌(インスト・鼻歌のみ)
  • 「ジングルベル」クリスマスソング(鼻歌のみ)
  • 「ラバウル小唄」軍歌・戦時歌謡(歌:多々良純)
  • 「露営の歌」中野忠晴/松平晃/伊藤久男/霧島昇/佐々木章(歌:多々良純)
  • 「芸者ワルツ」神楽坂はん子
  • 「炭坑節」福岡県民謡(インストのみ)
  • 『リゴレット』より「女心の歌」ヴェルディ(歌:三田隆)
  • 「あゝそれなのに」美ち奴(歌:三田隆・多々良純)
  • 「人を恋うる歌(妻をめとらば)」(歌:三田隆)
  • 「鳩」唱歌(歌:多々良純)
  • 「酒は涙か溜息か」藤山一郎(歌:三田隆)
  • 「うさぎとかめ」唱歌(歌:多々良純)
  • 「涙の渡り鳥」小林千代子(歌:多々良純)

 

楽曲使用シーン

  • 「こんな心持ち察してね」
    ・タイトルバックで流れる。(インスト)
    ・「うた自慢コンクール」で、きぬ子(久保幸江)が歌う。
    ・キャバレーのステージで、きぬ子と高倉敏が歌う。
    ・権田(進藤英太郎)が探偵社に入っていくシーンで流れる。(インスト)

  • 「軍艦行進曲」
    ・平野(船越英二)が鼻歌を歌いながら便所へ入る。
    ・キャバレーのバンドが演奏。(インスト)
    ・酔っぱらった村山(多々良純)が外で大声で鼻歌をうたう。

  • 「そんなのないわよ」
    ・マリ子(三條美紀)ときぬ子が買い物中に出くわすシーンで流れる。(インスト)
    ・キャバレーのステージで、きぬ子が歌う。

  • 「ジングルベル」
    ・大木(三田隆)が鼻歌をうたう。

  • 「ラバウル小唄」
    ・大木宅にやってきた村山が、酔っぱらって歌う。

  • 「露営の歌」
    ・大木宅にやってきた村山が、酔っぱらって歌う。
    ・酔っぱらった村山が外で大声で歌っているのが聞こえる。

  • 「芸者ワルツ」
    ・接待の席で神楽坂はん子が歌う。

  • 「?」
    ・接待の席で酔っぱらった平野が歌う。
     詞はおそらく本作オリジナル、「南京玉すだれ」みたいな調子の曲です。

  • 「炭坑節」
    ・キャバレーのバンドが演奏。(インスト)

  • 『リゴレット』より「女心の歌」
    ・酔っぱらった大木が外で大声で歌っているのが聞こえる。

  • 「あゝそれなのに」
    ・酔っぱらった大木が外で大声で歌っているのが聞こえる。
    ・酔っぱらった村山が外で大声で歌う(「うさぎとかめ」とつなげて歌っている)。

  • 「人を恋うる歌(妻をめとらば)」
    ・酔っぱらった大木が外で大声で歌う。

  • 「鳩」
    ・酔っぱらった村山が外で大声で歌う。

  • 「酒は涙か溜息か」
    ・飲み屋の店内BGM。(インスト)
    ・酔っぱらった大木が外で大声で歌う。

  • 「うさぎとかめ」
    ・酔っぱらった村山が外で大声で歌う(「あゝそれなのに」とつなげて歌っている)。

  • 「涙の渡り鳥」
    ・酔っぱらった村山が外で大声で歌う。

 

MEMO

音楽は古賀政男。

主題歌のSP盤の表記は「こんな心持ち察してネ」ですが、OPクレジットの表記は「こんな心持ち察してね」になっています。

キャバレーのバンドが演奏する「炭坑節」「軍艦行進曲」のジャジーなアレンジが実に楽しいです。

 

 

劇中に登場する映画

『黒水仙』

『黒水仙』は、デボラ・カー主演のイギリス映画。
監督はマイケル・パウエルとエメリック・プレスバーガー。
第20回アカデミー賞で、撮影賞と美術賞を受賞した作品です。
日本公開は1951(昭和26年)年3月。

大木(三田隆)の自宅近くのパチンコ屋前に、映画『黒水仙』の看板あり。

黒水仙(吹替版)
【監督】マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー 【出演】デボラ・カー ほか
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『三万両五十三次』

『三万両五十三次』は、1952年(昭和27年)1月25日公開の大映映画。
監督は木村恵吾、出演は大河内傳次郎・轟夕起子・折原啓子・河津清三郎ほか。
野村胡堂の原作を映画化、実に楽しい時代劇です。

大木の自宅近くのパチンコ屋前に、映画『三万両五十三次』の看板あり。

三万両五十三次
【監督】木村恵吾 【出演】大河内傳次郎・轟夕起子・折原啓子 ほか
  Amazonで視聴する
 

 

ラストシーンでは別の2作品に看板が変わっています。
ラストで映っている看板は、ハッキリ見えないので断定はできないのですが、ひとつは、おそらく『銭形平次捕物控 地獄の門』(1952年・大映)ではないかと思います。

 

あの企業・あの商品

日本電建

日本電建は、かつて存在した住宅会社。
この当時はまだ一般的でなかった月賦での住宅販売をウリにしていました。
ただし、月賦で買えるといっても、住宅ローンを組んで家を建てる現代のスタイルとは、システムが大きく異なっていたようです。

サンドイッチマンの仕事で日銭を稼いでいる村山(多々良純)が、銀座の街頭で日本電建のプラカードを掲げて歩き宣伝しています。
村山は、大木(三田隆)夫妻にマイホームを持つことをすすめ、日本電建を熱心にオススメ。
(契約を取ることで、日本電建の社員にしてもらうことを目指しているらしい…笑。)
その後、大木夫妻は家主から追い立てをくって、日本電建に月賦住宅の申し込みをしています。

 

社会の出来事・事件

「君たち二人や三人の生活なんぞ、どうなったってそんなことは構っちゃおれん!」と言い放った社長(小川虎之助)に対し、課長の潮万太郎が「放言になる」と指摘をするシーンがあります。

これはおそらく、1952年(昭和27年)に問題になった池田勇人の放言が元ネタ。

小川虎之助は、潮万太郎の指摘に対して「放言???あぁ、そうか。イケジマ大臣の例があるな」と返していますが、イケジマ大臣=池田勇人(当時は通産大臣)のことを暗に指していると思われます。

 

戦争の記憶

大木(三田隆)の友人として登場するサンドイッチマンの村山(多々良純)は、大木のかつての戦友。
軍隊時代の友人が登場するというのは、この時代の映画あるあるですね。

「楽しかったなぁ、軍隊は!」と言ってみたり、そうかと思えば泣き出して「軍隊はあかん!」と叫んでみたり、めちゃくちゃな多々良純。

○○は爆撃で死んだ、△△は病院で死んだ、□□は餓死した…という話をサラリと何でもないように語り合い、軍隊時代の思い出話の何気ない会話シーンに、ちょっとした笑いが盛り込まれているのですが、こういうのを見るにつけ、やはり戦争経験者は死生観が違うな…というのを感じずにはいられないのです。

 

 

注目!おしゃれファッション

平野(船越英二)が履いている、ガーター付き靴下。
ソックスガーター自体は今でも普通に売っていますが、最近のソックスガーターよりも、本作に登場するガーターの方がカッコイイです。

船越英二が股引(ももひき)&ガーター付き靴下という出で立ちで登場するシーンが2回あるのですが、これがなんというか、まるで競馬の騎手のようで、やたらオシャレなんです。
股引と靴下の組み合わせがこんなに格好良いと思ったのは初めて!
船越英二がスタイルよくてカッコイイからというのもあるかもしれませんが、メンズのファッションの良いお手本になりそうですね(人前で見せられる格好ではありませんが…笑)。

股引と靴下(&ガーター)だけでこんなにオシャレに魅せる男なんて、船越英二くらいかもしれません。

 

熱狂!歌唱シーン♪

本作には、久保幸江・神楽坂はん子・高倉敏と、歌手が3人登場します。

まず一人目の神楽坂はん子は、権田(進藤英太郎)を接待するシーンで登場。
「芸者ワルツ」の1番・2番・4番を歌っています。

そして二組目は、久保幸江&高倉敏。
久保幸江は、平野(船越英二)の妻・きぬ子役で出演しているのですが、キャバレーのアルバイトを始めたという設定で、キャバレーのステージに立って歌うシーンがあります。
まずは、高倉敏と一緒に登場し、「こんな心持ち察してね」を歌います。
このシーン、特に高倉敏の振りと表情がすっごくイイ!
こりゃあ、高倉敏ファンの人は必見ですね。

また別のシーンでは、同じくキャバレーのステージで、久保幸江が「そんなのないわよ」を歌っています。

 

キラリ☆出演者ピックアップ

高倉敏

「熱狂!歌唱シーン♪」の項でも書きましたが、高倉敏は、きぬ子役の久保幸江と一緒にキャバレーのステージで歌っています。

高倉敏は若くして亡くなってしまったので、映像はあまり残っていないんじゃないかと思うのですが、映画には何本か出演しているので、こうして見られるのはありがたいです。

動いている高倉敏を初めて見たのですが、こんなに表情豊かに歌う人だったんだ!と、ちょっと感動。
こういうのは、レコード聴いているだけでは、わかりませんからね。
実際に目で見てわかる、歌い手の新たな魅力発見!
見ていて実に楽しいショウでした。
こういう楽しみがあるから、昔の映画を見るのってたまらないんですよね!

 

 

【映画レビュー】きっと、幸せだった頃を思い出す。

三田隆&三條美紀夫妻と、船越英二&久保幸江夫妻。
二組の新婚ホヤホヤ夫婦の悲喜こもごもをコメディタッチで描いた本作。

新婚でラブラブだったのが、社長から命じられた謎の残業(実は接待)が原因で、夫婦仲に暗雲が立ちこめます…。
接待相手の社長(進藤英太郎)が、実は人捜しのために東京に来ていたことが判明し、そこから意外な展開に。
笑いも織り交ぜつつ、最後はホッコリ幸せ気分で終るのがイイ。

この当時の住宅事情なんかもチラリと垣間見えて、なかなか面白い作品です。

ちょこっと出てくる大家の娘・南田洋子と大泉滉のカップルが、なかなかクセ強くて笑える。
しかも、南田洋子の父親が左卜全っていう(笑)
なんだかすごい組み合わせで、この3人の顔見てるだけで笑ってしまいます(笑)
しかも、南田洋子のお色気(?)逆立ちシーンのオマケ付き。

他に気になった出演者といえば、ノンクレジットで、キャバレーの客の役で黒田剛らしき顔が見えます。

さてさて。

三田隆&三條美紀夫妻は、絵に描いたような新婚バカップルといった感じ。
まさに「新婚のろけ節」というタイトルがピッタリです。
船越英二夫妻も同様で、のろけ合うシーンなど、本当に微笑ましい。
みんな最初はこんな風に楽しかったはずなのに、いつの頃からか…なぜ…(遠い目)…と思いながら見る人もいるかもしれませんね(笑)

夫婦のあれこれだけでなく、父娘の物語なども絡ませ、笑ったり、しんみりしたり、盛りだくさん。

そして、本作の中でいちばんの輝きを放っているのが多々良純。

三田隆の戦友だった多々良純は、序盤は三田隆夫妻に迷惑を掛けるのですが、そんな彼が最後にとても素晴らしい仕事をするのです。
離婚寸前まで追い込まれていた三田隆&三條美紀が仲直りするシーン。
多々良純は、そっと近くの踏切を下ろし、仲直りの抱擁を交わす三田隆&三條美紀を二人だけの世界にしてあげる…。
なんてお洒落で素敵なんでしょう!
その多々良純の優しい笑顔に、胸がいっぱいになり、込み上げてくるものがあります。
幸せいっぱい、温かい気持ちで満たされ、何ともいえない心地よい余韻を残すラストです。

多々良純をよく知らない人も、この映画を見たら、きっとファンになってしまうはず。
酔っぱらって歌う、原形をとどめていない酷い歌の数々(笑)も、ラストの優しい笑顔も、強烈な輝きを放ち、作品に素敵な彩りを与えています。

 

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