1958年(昭和33年)公開の東映映画『月光仮面 魔人(サタン)の爪』。
東映の映画「月光仮面」シリーズの第三作目にあたります。
今回の敵は「サタンの爪」。
600年前の恨みに燃え、バラダイ王国の秘宝を狙うサタンの爪。
宝の鍵を握る少女・不二子(松島トモ子)らに、サタンの爪の魔の手が迫るが…。
果たして、バラダイ王国の秘宝は守られるのか!?
作品情報
【時間】62分/モノクロ
【配給】東映
【監督】若林榮二郎
【原作】川内康範(「少年クラブ」連載 「宣弘社プロ連続テレビ映画」より)
【出演】大村文武/小宮光江/松島トモ子/柳谷寛/若水ヤエ子/月丘千秋/植村謙二郎/松本克平/原泉/原國雄/高木新平/須藤健/杉義一/萩原満/山本緑/藤井珠美/岩城力/大東良/片山滉/富田浩太郎/久地明/轟謙二/滝沢昭/檜有子/岡野耕作/大筆兵部/三重街龍/江島讓/浜田格/東芸舞踊団
あらすじ
ある夜、シャバナン殿下(片山滉)がサタンの爪(植村謙二郎)に殺された。
シャバナン殿下が持っていたバラダイ王国の秘宝の地図を手に入れたサタンの爪は、その地図を読み解く「アラーの眼」を手に入れようと、シャバナン殿下と関係のあった浅川親子(月丘千秋&松島トモ子)や結城博士(松本克平)までも襲い…。
ロケ地
警視庁
東映の刑事モノなどではおなじみ、警視庁の建物の外観が登場。
松田警部(須藤健)は普段、ここの公安第三課にいます。
横浜
シャバナン殿下(片山滉)と関わりがあった浅川親子(月丘千秋&松島トモ子)を探すために、五郎八(柳谷寛)たちが横浜で捜索を行います。
晴海団地付近
サブーナ(岩城力)たちと浅川親子が乗った車を月光仮面が追うシーンは、中央区の晴海団地付近。
二子玉川園
五郎八たちが不二子(松島トモ子)を連れて遊園地へ行くシーンは、二子玉川園での撮影。
不二子や五郎八たちがフライングコースターに乗り、ベレーのお由(小宮光江)・マリンのおたき(原泉)がそれをコースターの下から睨んでいます。
その後、フライングコースターの降車口で不二子がお由&おたきに捕まり、再度誘拐されます。
東京国際空港(羽田空港)
祝(大村文武)・不二子・山本記者(杉義一)・結城博士(松本克平)は、羽田空港からバラダイ王国へと旅立ちます。
主題歌・挿入歌
主題歌
☆「月光仮面は誰でしょう」近藤よし子/キング子鳩会
☆「月光仮面の歌」三船浩
(☆印:OPにクレジットがある曲)
挿入曲
- 「?」(歌:松島トモ子)
- 「皇帝円舞曲」ヨハン・シュトラウス2世
楽曲使用シーン
- 「月光仮面は誰でしょう」
・タイトルバックで流れる。
・サブーナ(岩城力)たちと浅川親子が乗った車を月光仮面が追うシーンで流れる。
・ラスト、月光仮面が去っていき、祝(大村文武)が戻ってくるシーンで流れる。 - 「?」
不二子(松島トモ子)が踊りながら歌う。
シャバナン殿下(片山滉)の故郷の歌…という設定の曲ですが、曲名不明です。 - 「皇帝円舞曲」
二子玉川園の園内BGM。 - 「月光仮面の歌」
バラダイ王国でサタンの爪(植村謙二郎)らの前に月光仮面が現れるシーンで流れる。
注目!おしゃれファッション
結城博士になりすましたサタンの爪(植村謙二郎)が着用している、ウエストに絞りがあるスモック風の衣裳。
この服は、『多羅尾伴内 十三の魔王』(昭和33年・東映)で、多羅尾伴内役の片岡千恵蔵が画家に扮するシーンで着用していたのとまったく同じデザインのものです。
『多羅尾伴内 十三の魔王』はカラー作品なので、そちらを観ていただくと服の色がよくわかるのですが、地の色はグレー、首元・手首・比翼にあしらわれた波形の模様は黒です。
ウエストの絞り部分の飾りも黒っぽい色です。
本作はモノクロ作品なので服の色まではわかりませんが、服の色の濃度などから、千恵蔵さんが着用してたものと色も同じなのではないかな?と思いました(私が勝手に推測しただけなので、色違いという可能性もありますが)。
千恵蔵さんが着たものをそのまま使用したのか、まったく同じデザインのものを何着か仕立てたのか、ハッキリしたことはわかりません。
ただ、比翼部分の波形の模様を比較すると少し形状が異なっているように見えるので、植村謙二郎が着用しているものは、千恵蔵さんが着用していたものとは別に作ったものではないかな?と推測します。
こうして他の作品で見かけた衣裳を別の作品で発見するというのは、なんだかとても楽しく、うれしいものですね。
結城博士役の松本克平は、同じデザインの色違いのものを着用しています。
キラリ☆出演者ピックアップ
片山滉
サタンの爪(植村謙二郎)に暗殺されてしまうシャバナン殿下を演じている、片山滉。
シャバナン殿下は、片山滉が演じた役のなかでもお気に入りのひとつ。
わたしは片山滉のことをひそかに勝手にシャバナン殿下と呼んでいるのですが、それくらいこの役はお気に入りです。
ハッキリとしたお顔立ちの方なので、外国人役でも違和感ないんですよね。
片山滉は、『七色仮面 スリー・エース 悪魔の爪痕』『七色仮面 スリー・エース 真昼の誘拐指令』(昭和35年)での神父役、『少年探偵団 敵は原子潜航艇』(昭和34年)の原子潜航艇長役など、本作以外の作品でも外国人の役を演じています。
特に『七色仮面』スリー・エース編のカタコトのインチキ神父役は、主要登場人物のひとりでもあり登場シーンもかなり多く、胡散臭さ全開の演技は見ていて楽しい!
片山滉ファン、東映ファンのみならず、多くの人に片山滉の楽しい演技を見ていただきたいなと思います。
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【映画レビュー】シャバナン殿下と月光仮面の不思議ワールド
今回は、ちょっぴり異国情緒漂う作品であります。
サタンの爪(植村謙二郎)は、600年前に一族がバラダイ王国を追われた恨みをもってシャバナン殿下(片山滉)を手に掛ける。
シャバナン殿下が持っていたバラダイ王国の秘宝の地図を奪ったサタンの爪は、その地図を読み解くために必要な宝石「アラーの眼」を手に入れるべく、シャバナン殿下と関係のあった親子(月丘千秋&松島トモ子)を襲いにかかります。
松島トモ子は歌に踊りにと大活躍。
「シャバナン殿下の愛人の子」という設定に少しツッコミたくなるのですけど、シャバナン殿下は愛人がいて、しかも子どもまでいるとは、なんだかすごく不思議なお方だなというのが正直な感想。
サタンの爪がどうこうよりも、殿下が一体どんな人生を歩んできたのかが気になってしょうがない。
シャバナン殿下を主人公にしたスピンオフ作品とかあったらいいのにな…とか、どうでもいいことを考えてしまいます。
サタンの爪と祝(大村文武)のやり取り…。
「誰だ!」
「誰でもない!!」
…このやり取り、『七色仮面』でもあったと思うんですが、初出はやっぱり月光仮面なんでしょうかね?
「誰でもない!!」って返答、考えれば考えるほど哲学的なものを感じずにはいられません。
ヒトの肉体を持っている以上、「誰でもない」ってことはないと思うんですが、月光仮面という存在は個というものを凌駕したワンネスの領域を体現した存在なのだろうか…とか、いろいろ考えてしまいます。
しかし、「誰でもない!!」って言いながら、その直後に「正義の味方、月光仮面だ!」ってしっかり名乗ってるのは矛盾しているんじゃないか?と思ったりするんですが、そういうところも含めて月光仮面シリーズ大好きです(笑)
今回の敵・サタンの爪を演じているのは、わたしの大好きな植村謙二郎。
本作では不気味なお面を付けているため、顔が映るシーンが少ないのがちょっぴり寂しい。
本作で演じたサタンの爪のほかにも、『緑はるかに』(昭和30年・日活)、『少年探偵団 敵は原子潜航艇』(昭和34年・東映)など、子ども向け作品の悪役もいくつか演じている植村謙二郎。
ニヒルな悪役の印象が強いですが、こういう子ども向け作品での活躍にもぜひ注目していただきたいです。