にっぽんGメン 摩天楼の狼【1960年(昭和35年)/東映】

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1960年(昭和35年)公開の東映映画『にっぽんGメン 摩天楼の狼』。
「にっぽんGメン」シリーズの第5作。

主人公の刑事・不破竜太郎役に梅宮辰夫、その幼なじみの花屋・千鶴役に故里やよい、千鶴の妹・由利江役に三田佳子など。

不可解な死を遂げた親友について、捜査をする梅宮辰夫。
幼なじみの千鶴とその妹・由利江の周辺にも事件の影が見え隠れする…。

果たして事件の真相は…!?

 

作品情報

にっぽんGメン 摩天楼の狼
【公開】1960年(昭和35年)7月20日
【時間】74分/モノクロ
【配給】第二東映
【監督】伊賀山正光
【出演】梅宮辰夫/三田佳子/波島進/故里やよい/梶すみ子/荒川さつき/富田仲次郎/佐々木孝丸/清水一郎/須藤健/山口勇/永島朗/岩城力/曽根秀介/増田順司/安藤三男/岡野耕作/室田日出男/日尾孝司/高原秀麿/岡田敏子/久保比左志/大宮一馬/木川哲也/佐原廣二/相馬剛三/滝沢昭/高橋京子/醍醐都子/木下通子/千葉醇子/檜有子/山本緑/北原路子/清水みや子

あらすじ

現役の警察官がトルコ嬢と心中する事件が発生した。
心中した大隅刑事(滝沢昭)の背広の胸ポケットには、くちなしの花が挿してあった。
大隅の親友だった不破(梅宮辰夫)が捜査を続けるうちに、コールガール斡旋組織の存在が浮かび上がってくる。
組織のボスの名が「ブラック・ジョー」というところまでは突き止めたが、ジョーの正体は誰も知らないという…。

 

 

ロケ地

渋谷駅前

主人公・不破(梅宮辰夫)の登場シーンは、渋谷駅前での撮影。
東横百貨店を背にして、謎の怪しいグラサン男…という出で立ちで登場。
(その直後、新聞を踏んづけた梅宮がトルコへと向かうシーンは大泉撮影所だと思う。)

 

赤坂見附交差点付近

伊藤忠自動車の建物や東京タワーが見える街中のシーンは、赤坂見附交差点での撮影。
(千鶴&由利江姉妹の店「フラワーセントラル」が登場する直前のシーン。)
「フラワーセントラル」は、赤坂見附交差点の付近にある…という設定?っぽい。

また、懐かしの再会を果たした不破と千鶴(故里やよい)が二人で語らうシーンもこの近辺。
交差点のすぐ近くにある弁慶橋の上で、ふたりは弁慶堀を眺めながら語らいます。
ボートハウスの建物も見えます。

 

聖徳記念絵画館

神宮外苑にある、国会議事堂によく似た建物、聖徳記念絵画館。
劇中では「大谷公園」という設定。

トルコの支配人・梶浦(岩城力)が、絵画館前でブラック・ジョーの一味に撃たれて殺される。
また、由利江(三田佳子)も絵画館前にいたところをジョー一味に見つかり、近くの神宮球場へと逃げ込む。

 

明治神宮野球場

劇中では「大谷球場」という設定。
絵画館前でブラック・ジョー一味に見つかった由利江は、ナイターが開催されている神宮球場へと逃げ込みます。

神宮球場のシーンの詳細については、「映画のなかの昭和プロ野球」の項をご覧ください。

 

 

主題歌・挿入歌

挿入歌

  • 「会津磐梯山」福島県民謡(※インストのみ)

 

楽曲使用シーン

  • 「会津磐梯山」(インスト)
    トルコ風呂「夢の園」の店内BGM。

 

劇中に登場する映画

『ハバナの男』

『ハバナの男』は、1959年(昭和34年)公開のイギリス映画。
日本公開は1960年(昭和35年)6月22日。
出演はアレック・ギネス、バール・アイヴス、モーリン・オハラほか。

赤坂見附交差点付近のビルに、映画『ハバナの男』の看板あり。
イラストなどはなく、文字のみのシンプルな看板です。

ハバナの男【DVD】
【監督】キャロル・リード 【出演】アレック・ギネス、バール・アイヴス、モーリン・オハラ ほか
 

 

『続風雲黒潮丸 まだら狼』

『続風雲黒潮丸 まだら狼』は、1956年(昭和31年)8月22日公開の東映の時代劇映画。
「風雲黒潮丸」三部作のうちの第二部にあたります。
出演は伏見扇太郎、三笠博子、丘さとみ など。

不破(梅宮辰夫)と由利江(三田佳子)が出会うシーンで、「フラワーセントラル」の隣の建物の壁にポスターが貼られている。
頭に包帯を巻き巻きする梅宮辰夫の背後に、ポスターがずっと映っています。

 

 

映画のなかの昭和プロ野球

神宮球場

劇中では「大谷球場」という設定で登場する神宮球場。
絵画館前でブラック・ジョー一味に見つかった由利江(三田佳子)が、ナイターが行われている神宮球場へ逃げ込みます。
球場内の1階通路の様子も見ることができます。
売店・飲食店がズラリと並ぶ現在の球場内の様子とは違って閑散としていますが、逆に新鮮に感じますね。

場内アナウンスで「4番・レフト張本」と聞こえますが、実際にはこの当時の東映フライヤーズの本拠地は駒澤球場で、神宮球場は使っていないはず(東映が神宮を使い始めたのは1962年から)。
一応調べてみましたが、張本が東映に入団した1959年(昭和34年)~本作公開の1960年(昭和35年)7月20日までの間に、東映フライヤーズが神宮球場で試合をしたという記録は見つかりませんでした。
あくまで劇中での設定で、「大谷球場の試合で、張本という選手が4番・レフトで試合に出場している」…という設定なのでしょう。

このシーンではプロ野球の試合映像も挿入されますが、この試合映像については、どこの試合かは不明です。

 

キラリ☆出演者ピックアップ

清水一郎

元部下の松代(梶すみ子)に入れあげている、町工場の係長・町田を演じているのが清水一郎。
松代が転職してウエイトレスになった後も、松代の店に通い詰める。
(ウエイトレスというのは表向きで、実は松代は裏ではコールガールをやっている。)

やがて町田は、会社の金を使い込んでクビになってしまう。
それでもなお松代を追い続ける姿は、『河内カルメン』(昭和41年・日活)で野川由美子を追いかけていた佐野浅夫と重なります。

河内カルメン』の佐野浅夫には少しばかり幸せな時間がありましたが、こちらの清水一郎は悲惨。
哀れな中年男性の姿に、なんともいえない切ない気持ちになります。
ここまで情けなくて惨めな役の清水一郎ってあまり見たことがないような気がするので、とても印象に残ります。

 

 

【映画レビュー】荒ぶる梅宮辰夫、親友の謎の死の真相を暴く!

「にっぽんGメン」シリーズの第5作目。
今回の主役は梅宮辰夫。
前作『にっぽんGメン 特別武装班出動』で主役だった波島進は、今回は悪役です!

現役の警察官がトルコ嬢と心中する事件が発生しますが、事件には不可解な点が多かった。
心中した大隅刑事(滝沢昭)の親友だった不破(梅宮辰夫)が九州警察から呼ばれ、単独で事件の捜査に当たることになります。
そして、捜査を進めるうちに、コールガール斡旋組織の存在が浮かび上がってくるのですが…。

捜査をするうちに、幼なじみの千鶴(故里やよい)と偶然の再会を果たし、千鶴の妹・由利江(三田佳子)とも仲良くなる不破。
上司の原口(須藤健)から「昔の知り合いに会っても、決して現在の身分を明かしてはいけない」と言われていたにもかかわらず、途中で三田佳子姉妹に自分の身分を暴露してしまう梅宮辰夫。
警察がそんなに口が軽くてそれでいいのかと思ってしまうんですが、そんな意味不明な感じも含めて、この作品好きですね(笑)

捜査が思うようにいかずにフラストレーション抱えて、射的ゲームでバチバチに荒ぶる梅宮辰夫くん……射的場のお姉さんもドン引きしていて、ある意味こわいシーンですが、昭和ノスタルジーに引き込まれるシーンでもあります。
射的場のシーンにひっそりと登場する、目をピカピカ光らせる鬼の的が、なんともいえず懐かしい感じがして、涙ちょちょぎれそうになります。
やっぱ昭和人間には、テレビゲームよりもこういうアナログなゲームの方がシビれますね!
射的ゲームに登場する鬼は、何気に本作で印象に残るシーンのひとつです。

故里やよいが、幼なじみの梅宮辰夫にほのかな恋心を抱いているような描写もあり、恋愛要素もちょっぴりアリ。
しかし、事件は意外な展開を見せて、最後には悲劇が待っています。
故里やよいは、いつもとてもきれいな人だな~と見る度に思うのですが、とくに本作での和服姿は最高にイカしてます。

全部で5作ある「にっぽんGメン」シリーズの中では、話の筋もわかりやすい作品だと思います。
事件の黒幕である「ブラック・ジョー」の正体についても、この時代の作品をよく観る人であれば、序盤の時点で「絶対コイツだろう」と察しがついてしまうのですが(笑)、そんなわかりやすすぎるところも愛すべき作品です。
個人的には、シリーズのなかで一番面白くて好きです。
(ただし、三作目の『にっぽんGメン 不敵なる逆襲』だけは現時点では未鑑賞ですが…。)

最後に、注目のおすすめポイントである波島進について。
波島進は正義イメージが強い役者さんですが、たまに悪役もやっていて、その中でも今回はブラック度なかなか高めなんじゃないかと思います。
メイクで目元を黒っぽくしていて、見るからにワルっぽい感じに仕上がってます。
さらに、無表情で鼻毛カッターで鼻ホジホジしてる姿には、なんともいえない戦慄を覚えます(笑)
前作『にっぽんGメン 特別武装班出動』でみせた活躍と本作との落差がたまらない!
終始無表情で魅せる波島進の怪演技も、本作の見どころのひとつです。
ぜひ、ご注目を!

 

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