1959年(昭和34年)公開の日活映画『青い国道』。
フランク永井が歌う「青い国道」に若者の夢のせて描かれる歌謡映画です!
主演の船乗り役には青山恭二。
主題歌にもなっている「青い国道」を歌うフランク永井は、青山恭二とは恋のライバルとなる運転手役で登場。
下関を舞台に、船乗りの夢と恋と友情の物語を描きます。
作品情報
【時間】52分/モノクロ
【配給】日活
【監督】堀池清
【出演】青山恭二/堀恭子/フランク永井(ビクター)/小園蓉子/木室郁子/三崎千恵子/山田禅二/河上信夫/峰三平/山之辺潤/島村謙二/神山勝/小泉郁之助/芝あをみ/三沢孝子/森島冨美子/佐久間玲子/石塚みどり/清水了太/水谷謙之/榎木兵衛/水木京一/古田祥/二階堂郁夫/渡井嘉久雄/深川泰義/瀬山孝司
【協賛】下関市/下関観光協会/大洋漁業株式会社
あらすじ
外国航路の船に憧れる隆二(青山恭二)だったが、船乗りだった父親が捕鯨船で事故に遭い亡くなったこともあり、母親(三崎千恵子)からは外国行きの船に乗ることに反対され、関門連絡船の船乗りをしていた。
あるとき、外国航路の船に乗る夢が叶いそうになるものの、大反対の母親と恋人によって、その夢は妨害されてしまう。
夢絶たれ、自暴自棄になった隆二は…。
ロケ地
関門トンネル
タイトルバックに関門トンネルの映像。
門司側からトンネルに入り、下関側へと抜けます。
このほか、隆二(青山恭二)の身に危機が迫るシーンに、ラストに…と、要所で関門トンネルが出てきます。
また、永見(フランク永井)の妹・千枝(木室郁子)が、関門トンネル人道入口で働いています。
関門トンネルは、本作公開の前年、1958年(昭和33年)3月に開通しています。
林兼産業株式会社
加根子(堀恭子)が勤めているのが林兼産業。
ソーセージ工場の製造ラインの仕事をしている。
関門連絡船発着場
下関と門司を結ぶ関門連絡船の乗り場。
連絡船乗務員の控え室(事務所のようなところ)の中の様子も見ることができます。
隆二と吉川船長(山田禅二)は、関門海峡汽船の「第三海峡丸」に乗船しています。
第三海峡丸の詳細については、「美しい建築」の項をご覧ください。
国道9号沿い
フランク永井が「青い国道」を歌いながら街中を運転しているシーンは、下関駅のすぐ近くの国道9号沿いを走っている。
(通り沿いに福岡銀行と三井銀行の建物が見えるシーン。)
また、終盤には入江口のバス停が出てきます。
加根子が入江口の停留所からバスに乗ろうとしますが、あと一歩のところで間に合わずに乗り遅れます。
加根子が乗ろうとしていたバスは江の浦行き。
たまたま出くわした永見が加根子を車で送るシーンでは、専門大店などが映っているのが確認できます。
下関市立下関水族館
永見が加根子をデートに誘うもすっぽかされる…という、ちょっぴり寂しいシーンの舞台となっているのが下関水族館。
永見の台詞によると「今度新しいイルカが入った」らしい。
かわいいイルカちゃんのショーなどを観ることができます。
デカデカと映し出される鯨館も印象に残ります。
長府遊園地
下関水族館のシーンで、すぐ向かいにあった長府遊園地も映ります。
観覧車や回転遊具などが映っています。
子どもや親子連れだけでなく、中高生ぐらいの男子学生たちの姿も多く見えるのが印象的。
火の山ロープウェイ
隆二と加根子がデートでロープウェイに乗りますが、なぜか喧嘩を始める。
喧嘩はさておき、ガイドさんの解説を聞きながら、窓から見える美しい景色を堪能できます。
頂上からの絶景も素晴らしい!
また、関門連絡船発着場のシーンでは、火の山ロープウェイのポスターが貼られているのが映っています。
江戸金
元船乗りの丸井(河上信夫)が働いているのが、老舗の菓子店「江戸金」。
加根子がたまたま通りがかった江戸金の店の前で丸井に遭遇します。
門司港駅
父親の墓参りのため、隆二が門司港駅から阿蘇山の麓にある墓へと向かう。
駅の外観が映ります。
主題歌・挿入歌
主題歌
☆「青い國道」フランク永井
(☆印:OPでクレジットのある曲)
挿入歌
- 「おてもやん」熊本県民謡
- 「蛍の光」(インストのみ)
楽曲使用シーン
- 「青い国道」
・タイトルバックで流れる。
・永見(フランク永井)がトラックを運転しながら歌う。
・ラスト、永見と隆二(青山恭二)が門司まで競争するシーンで流れる。 - 「おてもやん」
吉川船長(山田禅二)・丸井(河上信夫)・大友(小泉郁之助)が料亭で飲むシーンで、芸者たちが歌い踊る。 - 「蛍の光」(インスト)
隆二が乗るはずだった外国航路の船が出航するシーンで流れる。
劇中に登場する映画
『忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻』
『忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻』は、1959年(昭和34年)1月15日公開の、東映の時代劇映画。
監督は松田定次、出演は片岡千恵蔵・市川右太衛門・中村錦之助など、超豪華東映オールスターキャスト。
国道9号沿いに、「東映センター」などの映画館の広告と一緒に『忠臣蔵』の大きな映画看板が見える。
作品の正式名称は『忠臣蔵 櫻花の巻・菊花の巻』ですが、看板には「忠臣蔵」としか書いていません。
『隠し砦の三悪人』
『隠し砦の三悪人』は、1958年(昭和33年)12月28日公開の、東宝の時代劇映画。
監督は黒澤明、出演は三船敏郎・上原美佐・千秋実・藤原釜足・志村喬・藤田進など。
国道9号沿いに、「市民館OS」などの映画館の広告と一緒に『隠し砦の三悪人』の映画看板が見える。
『シンバッド 七回目の航海』
『シンバッド 七回目の航海』は、1958年(昭和33年)12月公開のアメリカの特撮映画。
監督はネイサン・ジュラン、出演はカーウィン・マシューズ、キャスリン・グラントなど。
国道9号沿いに、「下関文化劇場」の看板と一緒に『シンバッド 七回目の航海』の映画看板が見える。
『荒原の王者』
『荒原の王者』は、1958年(昭和33年)12月公開のアメリカの西部劇映画。
監督はR・G・スプリングスティーン、出演はジョージ・モンゴメリー、ダイアン・ブルースターなど。
「江戸金」の店のすぐ向かいに、『荒原の王者』の看板(ポスターかも?)が見えます。
あの企業・あの商品
大洋漁業株式会社
協賛に名を連ねているのが大洋漁業(現:マルハニチロ)。
運転手役で出演しているフランク永井は、劇中で大洋漁業の運搬車に乗っています。
林兼産業株式会社
隆二(青山恭二)の恋人・加根子(堀恭子)が勤めているのが林兼産業。
会社の建物の入口付近が映るほか、ソーセージやハムの箱詰めなどの工場内のライン作業など、会社の内部の様子も見ることができます。
ダンロップ
永見(フランク永井)が被っている帽子に「ダンロップ」の文字。
フランク永井が登場するたびに文字が目に入るので、宣伝効果バツグン(笑)
また、関門トンネルの入口上部の山の斜面にもダンロップの大きな看板があります。
(当時は、このあたりに門司ロープウェイが通っていました。)
江戸金
元船乗りの丸井(河上信夫)が働いているのが、下関銘菓「亀の甲煎餅」をつくっていた老舗の菓子店「江戸金」。
河上信夫は江戸金の法被を着て店頭に立っています。
店の奥の方には、煎餅を焼いている職人さんらしき人の姿も見ることができます。
店頭には亀の甲煎餅のほかに「カステーラ」も並んでいるのが見えます。
残念ながら、江戸金さんは2022年3月末に閉業されています。
美しい建築
第三海峡丸
今回は、ちょっと番外編。
美しい建築というか、船なので建造物というのが適切かもしれません。
劇中に度々登場する、隆二(青山恭二)と吉川船長(山田禅二)が乗っている船「第三海峡丸」。
この船は、関門海峡汽船株式会社が所有していた船です。
建造は松浦鉄工造船所、竣工は昭和12年5月。
旅客定員は183(3等)、乗組定員は6。
船籍港は門司港。
主に戸畑ー藍島、下関ー小倉の航路に使われていたようで、門司ー下関の航路では予備船だったようです。
のどかな海の風景に、かわいい船がスイスイと進む姿は、この映画のなかでも特に鮮やかな印象を残します。
熱狂!歌唱シーン♪
フランク永井が、大洋漁業のトラックを運転しながら「青い国道」を歌うシーンあり。
この時代の映画によく見られる派手な歌唱シーンではありませんが、これはこれで味わい深いものがありますね。
主題歌を歌っている歌手が、ご当地企業の運搬車を運転しながらご当地ソングを歌うなんて、これ以上ないくらいのご当地アピールだと思います。
キラリ☆出演者ピックアップ
河上信夫
元船乗りで、老舗「江戸金」で働いている丸井を演じているのが河上信夫。
登場シーンはあまり多くないものの、たまたま会った加根子(堀恭子)に余計なことをベラベラとしゃべって爆弾投下するなど、なかなか強烈な印象を残すキャラクター。
若い恋人たちの仲に亀裂を生じさせる…それはそれは、なかなか凄まじい破壊力。
本人にはまったく悪気がないのが、かえってタチが悪い。
しかし、現実世界にもこういう人っているよね~という、妙な説得力がある人物でもあるんですよね。
この破壊力の凄まじさはクセになります。
優しい笑顔でとんでもない爆弾を投下する…というそのギャップに、なんともいえない戦慄を覚えます(笑)
河上信夫が演じた役のなかでも、とても好きな役の上位に入るかもしれない(笑)
【映画レビュー】観光PRもバッチリ!アクション風味の歌謡映画
フランク永井の「青い国道」にのせて、若者の夢や恋を描く歌謡映画。
アクション風味のエッセンスもちょっぴり効いています。
舞台が下関で、しかも大洋漁業が協賛ということで、野球ファンとしては大洋ホエールズが登場するのではないかと勝手に期待してしまうところなんですが、残念ながら大洋の話題は一切出てきません。
本作は1959年(昭和34年)公開なので、この頃にはすでに大洋の本拠地は移転してしまっているのでね。
関係ない野球の話はさておき。
主人公は、わたしも大好きな青山恭二。
外国航路の船に憧れる青山恭二は、母親(三崎千恵子)から外国行きの船に乗ることに反対されていることもあり、関門連絡船の船乗りをしています。
そんなある日、夢が叶いそうになるものの、外国航路の船に乗ることに大反対の母親と恋人(堀恭子)によって、ことごとく妨害されてしまいます。
挙げ句の果てに、おかしな連中に変な船に乗せられ、青山恭二の身に危険が迫る…。
散々です(涙)
そんな可哀想な船乗り君なんですが、小林旭ばりに暴れまくる青山恭二がイカす!!!
青山恭二は、『嵐を呼ぶ男』(昭和32年・日活)で見せたようなちょっとナヨナヨした役(石原裕次郎の弟役)なんかもなかなかいいんですが、やっぱり本作のような男くさい役の方がカッコイイんですよねぇ。
関門トンネルができて、これから先、何年連絡船が動くか分からない…という、ちょっと寂しい話も出てきます。
華やかなトンネル開通の裏で揺れ動く、船乗りたちの微妙な心境も描き出される…。
些細な一コマではあるんですが、発展の陰で消えていくものもあるわけで、ふと立ち止まって、いろいろと考えてしまうシーンでもあります。
関門連絡船には民間航路と国鉄の航路がありましたが、国鉄の関門連絡船は実際にこの数年後に廃止になっています。
(ちなみに、青山恭二は関門海峡汽船の船乗り…という設定っぽい。)
青山恭二の恋人・加根子(堀恭子)にひそかに思いを寄せているのが永見(フランク永井)。
運転手役のフランク永井は、協賛である大洋漁業の運搬車を仕事で運転しています。
加根子に恋人がいるとは知らずにデートに誘い、すっぽかされて水族館でひとり待ち続けるシーンは、なんだかとても切ない。
イルカちゃんのショーをひとり寂しく見つめるフランク永井の切ない表情が、脳裏に焼き付いて離れない。
無邪気に飛び跳ねるイルカちゃんたちとの対比が、さらに切なさを増幅させ、胸がキュッと締め付けられます…。
恋敵ともいえる青山恭二とフランク永井ですが、青山恭二のピンチをたまたま見かけたフランク永井が救い、いつの間にか二人の間には友情が芽生えているのでした。
フランク永井が歌う「青い国道」は、歌詞をよくよく聞いてみると、関門トンネルのことを謳っているものであることがわかります。
そして、地元企業や観光地もぞくぞくと登場。
下関の観光や産業が十分にアピールされていて、観光映画としての役割も大きい作品だと思います。