1956年(昭和31年)公開の日活映画『殺人計画完了』。
主役の軍医崩れの逃亡者に三橋達也、それを追う悪の組織に大坂志郎・清水将夫・植村謙二郎らを迎えて描く、スリリングなアクション作品。
悪の組織から逃れる男とその恋人に、恐怖の殺人計画が次々と襲いかかる…!
果たして、二人は魔の手から逃げきることができるのか…!?
作品情報
【時間】88分/モノクロ
【配給】日活
【監督】野口博志
【出演】三橋達也/大坂志郎/日髙澄子/多摩桂子(新人)/清水将夫/天草四郎/深水吉衛/植村謙二郎/明美京子/雨宮節子/相馬幸子/紅沢葉子/髙品格/武藤章生/弘松三郎/雪岡純/美川洋一郎/黒田剛/青木富夫/河上信夫/井東柳晴/深江章喜/伊丹慶治/福田トヨ/谷川玲子/鳴海弘子/植村進/野口豊/山之辺閃/河瀬正敏/神山勝/峰三平/永島明/小柴隆/柳瀬志郎/谷和子/中沢榮子/有川みさを/髙弘純(技斗)
あらすじ
軍医崩れの浅見(三橋達也)は、川崎(清水将夫)が経営する「ナルコ化粧品」の研究員として働いたが、それは表向きで、実はヒロポンの代用品の研究をやらされていた。
浅見は、恋人の阿矢子(多摩桂子)と一緒に東京へ逃亡。
しかし、東京では君麿(大坂志郎)らが浅見と阿矢子を待ち構え、さらには大阪から川崎が追ってきた。
そんな中、浅見は偶然、大怪我をした君麿を助ける。
浅見に恩義を感じた君麿は、川崎たちの手から浅見を守ろうとするが…。
ロケ地
大阪駅
冒頭、浅見(三橋美智也)と阿矢子(多摩桂子)が大阪駅から列車に乗って、追っ手から逃げます。
駅の外観と、車窓からの風景が見られます。
撮影した時期が春頃だったらしく、車窓から見える阪神百貨店の外壁に「せんばつ」と書かれているのが見えます。
横浜駅
浅見と阿矢子が途中下車するのが横浜駅。
後をつけていた宮本(植村謙二郎)も下車します。
竹芝桟橋
浅見たちが大島行の船に乗るために向かったのが、竹芝桟橋の東海汽船乗船場。
しかし、二人は船に乗り遅れてしまいます。
東海汽船の乗り場には、二人を狙う追っ手たちもウロウロしています。
新橋駅
大阪から上京してきたボス・川崎(清水将夫)を、宮本ら部下たちが国鉄新橋駅で出迎えます。
清水将夫らは東口から出てきて、出口のすぐ前につけた車に乗ります。
また、終盤には、銀座線新橋駅のホームで、浅見殺人計画が実行されます。
警視庁
進藤刑事(深水吉衛)と松方刑事(美川洋一郎)が食堂?で会話するシーンの直前に、警視庁の建物外観が映ります。
「月島通八丁目」電停
徳平(雪丘純)から逃げる浅見が、「月島通八丁目」の停留所から新宿駅行きの都電に飛び乗ります。
銀座
浅見が乗った都電が、歌舞伎座前を通ります。
その後、浅見は「銀座四丁目」の停留所で下車(奥には日劇が見える)。
銀座ライオン(今の「GINZA PLACE」がある場所)のところを左折して銀座通り(国道15号)を直進し、第一銀行銀座支店前で新聞を買った後、「ヱスヤ」に逃げ込みます。
主題歌・挿入歌
挿入歌
- 「お富さん」春日八郎(歌:酔っぱらい二人組)
楽曲使用シーン
- 「お富さん」
酔っ払い二人組が歌いながら歩いている(そして大坂志郎にぶつかる)。
あの企業・あの商品
ヱスヤ
宮本(植村謙二郎)たちに追われていた浅見(三橋達也)が逃げ込んだのが、銀座にあったヱスヤ。
ヱスヤは風呂釜やコンロ、厨房用品などを製造・販売していました。
売店が銀座、工場が品川区にあったようです。
店内の様子を見ると、コンロやストーブに、ミキサーなどの家電も並んでいますが、どれもモダンで素敵なデザイン。
お店の雰囲気も洗練されていて、とてもオシャレです。
そんなオシャレなヱスヤを舞台にとんでもないことが起こってしまうのが、この映画のスゴいところです(笑)
戦争の記憶
主演の三橋達也は、軍医崩れという設定。
腕の良い軍医だったらしいですが、復員後の職探し等がうまくいかずに落ちぶれたらしいことが、かつての上官との会話からわかります。
貧乏しながらも善良な町医者となっていた元軍医長(天草四郎)に対し、自身の情けなさを恥じる三橋達也。
二人の会話シーンは、戦後の激動の時代を普通に生きることがいかに大変であったかを知るのに十分。
戦争の影を引きずりながら、戦後の貧しい時代を生きる人間のドラマがチラリと垣間見えます。
キラリ☆出演者ピックアップ
多摩桂子
三橋達也の恋人役を演じている多摩桂子。
本作以外では目立つ役で出演しているのをあまり見かけたことがないような気がしますが、本作では出番多し。
新人とクレジットされていますが、本作より先に公開された『死の十字路』などにも出演しています。
日高澄子にぶん殴られても「ウフフ☆」と嬉しそうにする演技などは、思わず「まぁ可愛い☆」と言ってしまいそうになる(笑)
清楚な感じの美人さんで、どこか影があるのが印象的。
三橋達也ともなかなかお似合いです。
【映画レビュー】殺人計画オンパレード!(未完了)
「わたしたちは追われている!」…という、三橋達也の叫びから始まる、スリリングなアクション。
大阪の化粧品会社(実は悪の組織)でヒロポンの代用品の研究をやらされていた三橋達也は、恋人の多摩桂子と一緒に東京へ逃亡。
三橋達也が持っている鞄には、自身が開発したヒロポンの代用品が入っていて、追っ手たちはその鞄の中身と命を狙ってきます。
大阪からやってきたボスの清水将夫&東京を任されていた大坂志郎が、部下たちと必死に三橋達也の行方を追いますが、清水将夫と大坂志郎は次第に対立していきます。
ポン中の大坂志郎が、偶然助けてもらった三橋達也に恩義を感じて守ろうとします。
ワル軍団の中では、なぜか一人だけちょっとお上品な感じだった大坂志郎ですが、意外な出自が判明し、「まだ良心が残っていた」という展開にも納得。
漲る緊迫感とは裏腹に、いろいろとツッコミどころも多い作品だったりします。
列車内で三橋達也の始末に失敗したうえ列車から突き落とされ、死んだかと思ったら、いつの間にかしれっと戻っている不死身の弘松三郎!
通行人が多数いる地下通路で拳銃をぶっ放してしまう青木富夫!!
そんな愉快な仲間たちに、ちょっぴり癒されます。
そして、謎が謎を呼ぶ殺人計画の数々…。
植村謙二郎が使ったガス殺人のトリックには驚愕してしまうのですが、しかし、ここにひとつの疑問が。
ガスの栓に絡めたワイヤーを、あんなにいとも簡単に隣室から外すことってできるんですかね???
そして、大きな疑問その2。
川に放り込まれた三橋達也の鞄(中にポンの代用品が入っている)はそのままでいいのか?
清水将夫が「あの鞄を探しに行け!」と指示するのかと思いきや、望みがないと思ったらしく完全スルー。
なんと諦めのよいボス!
終ってしまったことは仕方がないと切り替え、さっさと次の計画に取りかかろうと自ら新しいアイデアを提案する姿勢は、人の上に立つ者としての素質十分です。
後に清水将夫は「代用品の製法がわかった」と語っているのですが、どうやって作り方がわかったのか教えてほしい。
そんなに簡単に作り方がわかるのであれば、はじめから三橋達也を雇わずにボスの清水将夫が自ら開発すればよかったのでは???という素朴な疑問がむくむくと湧いてきます。
そして極めつきは、銀座・エスヤの屋上から三橋達也目がけてブロックを落とすという、他人を巻き添えにしそうな恐怖の大作戦。
次々に展開される恐怖の殺人計画には戦慄を覚えますが、その作戦のセンスになぜかちょっと笑ってしまうのはなぜだろう…笑。
「事件記者」シリーズのウメチョウこと深水吉衛が刑事役で出演し、清水将夫と愉快な仲間たちを密かに追っていますが、これがまたピリッと効いたスパイスに!
女給にデレデレ、ダンスをキメキメのウメチョウ、なかなかイカす!!!
ウメチョウ&美川洋一郎のステキなオジサマ刑事コンビは、オジサマ好きにはたまらないかもしれません。
緊迫感とツッコミどころのバランスが良く、なんだかんだでワクワク・ドキドキしてしまう何ともいえない心地よさがあり、わたしはこの作品大好き。
とても楽しい88分でした。