1959年(昭和34年)公開の東映映画『月光仮面 怪獣コング』。
映画版の月光仮面シリーズの第4作目にあたります。
嵐の夜に起きた、死刑囚の集団脱獄と、山脇博士の誘拐事件。
さらには、要人たちが次々と怪獣に襲われ、秋山警視総監も襲撃されてしまう…。
果たして、怪獣コングの正体は…!?
作品情報
【時間】59分/モノクロ
【配給】東映
【原作】川内康範(雑誌「少年倶楽部」連載 穂髙書房・版 宣弘社プロ・テレビ映画より)
【監督】相野田悟
【出演】大村文武/白河通子(ニュー・スター)/若水ヤエ子/加藤嘉/山本麟一/増田順司/松本克平/柳谷寛/須藤健/長谷部健/原國雄/泉和助/花沢德衞/藤井珠美/池谷三郎(ラジオ東京)/ヨセフ・オットーマン/佐々木きよの/小杉義隆/立松晃/高田博/北峰有二/田口耕平/久保一/志摩栄/楠みのるとゴールデン・ショウ
あらすじ
戦後最大の台風の夜、北多摩刑務所から死刑囚が集団脱獄した。
さらにその夜、原子抗素体を研究している山脇博士(増田順司)の研究所が襲われ、博士が誘拐されるという事件も発生。
事件現場となった博士の研究所を訪れた祝(大村文武)や松田警部(須藤健)は、そこで怪獣コング(山本麟一)に遭遇するのだったが…。
ロケ地
警視庁
おなじみの警視庁の建物の外観が映ります。
怪獣コング対策捜査本部が置かれている設定。
暗い中にどっしりと浮かぶ建物は、いつもとはちょっと違った趣でいいですね。
拝島橋
松田警部(須藤健)が「総監はいま八王子に出張されたばかりだ」と言うシーンの直後、秋山警視総監(松本克平)を乗せた車が通過する橋は、おそらく昭島市にある拝島橋。
ドクター(ヨセフ・オットーマン)たちの車も拝島橋を通り、秋山総監の車を追います。
その後、ヘリに乗った怪獣コング(山本麟一)が月光仮面に向かって機関銃を発射するシーンも、拝島橋の上です。
秋山警視総監は、八王子街道で怪獣コングに襲われた…という設定です。
関東逓信病院
秋山警視総監が入院している病院として登場する建物は、五反田にあった関東逓信病院。
建物の外観、玄関付近が映ります。
(病室のシーンの撮影場所は不明。)
有明
山本記者(長谷部健)・五郎八(柳谷寛)・カボ子(若水ヤエ子)が駆けつけた、国際暗殺団のアジトがある場所は、江東区の有明。
対岸の豊洲にあった東京電力の新東京火力発電所や東京ガス豊洲工場が見えます。
この近辺、有明や晴海のあたりは、月光仮面シリーズには頻繁に登場します。
春海橋
国際暗殺団首領の手下(花沢徳衛&高田博)を追って、五郎八とカボ子が乗ったバイクが通過する橋は、晴海と豊洲の間に架かる春海橋。
春海橋のすぐ横に平行して架かっている晴海鉄道橋(晴海橋梁)の姿がしっかりと確認できます。
主題歌・挿入歌
主題歌
☆「月光仮面は誰でしょう」近藤よし子/キング子鳩会
☆「月光仮面の歌」三船浩(※劇中での使用なし)
(☆印:OPにクレジットがある曲)
挿入曲
- 「ト調のメヌエット」ベートーヴェン
- 「敵は幾万」軍歌(歌詞の引用のみ)
楽曲使用シーン
- 「月光仮面は誰でしょう」
・タイトルバックで流れる。
・月光仮面が怪獣コングの前に現れるシーンで流れる。
・ラスト、月光仮面が月へ帰って行くシーンで流れる。 - 「ト調のメヌエット」
ラジオから流れる。 - 「敵は幾万」
カボ子(若水ヤエ子)の台詞に「敵は幾万」の歌詞が引用されている。
戦争の記憶
国際暗殺団のアジトがある場所として登場する、江東区有明の原っぱにて、山本記者(長谷部健)が
「この辺は戦争中、陸軍の高射砲陣地があった跡でね。それが散々爆撃されて、今じゃご覧の通りの荒野だよ」
と言うシーンがあります。
わたしは高射砲陣地跡などの戦争遺構にはあまり詳しくないのですが、有明のこの辺も高射砲陣地跡だったのでしょうか。
対岸(豊洲)に東京電力の新東京火力発電所や東京ガス豊洲工場が見える場所ですが、山本記者たちが立っている場所は、本当に何もない荒れ地といった感じです。
今はすっかり綺麗に整備されている場所ですが、本作で見られる荒れた野原といった佇まいは、戦争の記憶が残る貴重な姿なのかもしれません。
キラリ☆出演者ピックアップ
小杉義隆
トルコ風呂の客を演じているのが小杉義隆。
五郎八(柳谷寛)とカボ子(若水ヤエ子)が開けてしまった部屋で、ご満悦の表情でサービスを受けているオッサンの役です。
登場するシーンは一瞬だけなのですが、わたし個人的には、本作に登場するキャラクターのなかでは一番好きなキャラです(笑)
整った顔で、とても素敵なオジサマという印象がある方ですが、本作ではバーコード風のカツラにチョビ髭をつけて、デレデレとしたオッサンの役を熱演(笑)
台詞は「バカモン!!」の一言だけですが、その表情といい、小杉さんの新たな魅力を発見できた楽しい演技でした。
【映画レビュー】国際暗殺団、首領と愉快な仲間たち。
映画版「月光仮面」シリーズの第四作目。
シリーズ一作目『月光仮面』と二作目『月光仮面 絶海の死斗』でタイガー役だった長谷部健が、本作では山本記者役で復活!
タイガー大好きだった私は、長谷部健がまた戻ってきてくれて嬉しくて、涙ちょちょぎれそうになります(笑)
今回は、死刑囚の集団脱獄に、原子抗素体の研究者・山脇博士(増田順司)の誘拐、さらに秋山警視総監(松本克平)が怪獣コングに襲われる…という事件が立て続けに発生。
その裏には、国際暗殺団の首領(加藤嘉)の存在が…。
松田警部(須藤健)の台詞によると、山脇博士が研究していた原子抗素体とやらは、原爆の放射能を防ぐ血清のようなものらしいです。
しかし、重大な欠陥が見つかり、それを国際暗殺団首領に利用されてしまったんですね。
怪獣コングを演じているのは山本麟一ですが、特殊メイクを施しているため、ほとんど誰だかわかりません(笑)
ヤマリンだよ!と言われれば、あぁそうなんだね!という感じがしなくもないけれど、でも本当にほとんどわかりません。
体格がガッシリしているので怪獣を演じるのには向いていると思いますし、ヤマリンの演技の新たな魅力発見!という役柄ですね。
加藤嘉の手下たちは、なかなか素敵な顔ぶれ。
国際暗殺団の衣裳を着ている花沢徳衛を見ていたら、『ドラえもん』に出てくる「宇宙怪人スネール」を思い出しました。
衣裳が似合いすぎるんですよ(笑)
ほかに、国際暗殺団首領の手下のなかには曽根晴美がいますね(ノンクレジット)。
本作もそうなんですけど、東映の特撮モノでヘンテコリンな衣裳を着てクソ真面目に演技している俳優さんたちに、愛を感じずにはいられません。
ほんと、この時代の東映の俳優さんたち大好き!!
「ヘンテコリンな衣裳」とか書いちゃいましたが、もちろん褒め言葉です。
本作の国際暗殺団の衣裳は、デザインがなかなかカッコイイと思いますよ。
胸のエンブレムのコブラのデザインとか最高です。
国際暗殺団の首領を演じている加藤嘉は、同じく東映の「少年探偵団シリーズ」の『少年探偵団 かぶと虫の妖奇』『少年探偵団 鉄塔の怪人』では怪人二十面相を演じていて、本作以外でも子ども向け作品の悪役をやったことがあるんですが、それが結構似合うんですよね(笑)
本作に登場する長宗我部なんかも、どっからどう見てもおかしいんですけど(笑)、それこそがこの時代の東映特撮作品の楽しさ!なんですよね。