1959年(昭和34年)公開の東映映画『月光仮面 悪魔の最後』。
東映の劇場版「月光仮面」シリーズ第六作。
大村文武主演の月光仮面シリーズの最終作となります。
毒蜘蛛を使った連続殺人事件と、それとは別に暗躍する黒い影。
錯綜する悪の思惑…果たして、事件の結末は!?
作品情報
【時間】60分/モノクロ
【配給】東映
【原作】川内康範(少年クラブ・連載 穂高書房・版 連続テレビ映画より)
【監督】島津昇一
【出演】大村文武/山東昭子/若水ヤエ子/梅宮辰夫/柳谷寛/清水一郎/岡譲司/増田順司/齋藤紫香/萩原満/成瀬昌彦/山口勇/安藤三男/住田知仁/ハロルド・S・コンウェイ/岩上瑛/久保一/沢彰謙/黒瀬千代子/木村英世/北原通子/松原光子/檜有子/コミック・サックス・ショウ
あらすじ
白髪鬼と名乗る人物の手により、毒蜘蛛を使った連続殺人事件が引き起こされる。
怪しい人物を尾行した祝(大村文武)は、防空壕にいた毒物学者・白上博士(清水一郎)を発見する。
白上博士は戦時中に南方の島で戦死したとされていたが、実はその島には博士たちの他に3人の軍人がいたことが発覚し…。
ロケ地
上野動物園
新聞の三行広告を見た祝(大村文武)らが、「熱帯のヒョウ」という言葉をヒントに、上野公園へ向かい張込みをします。
サル・トラ・ゾウ・ヒョウなどの姿が確認できます。
村山上貯水池(多摩湖)
西川(岡譲司)たちに拉致された木の実(黒瀬千代子)を月光仮面が追うシーン、西川たちの車や月光仮面のバイクが通過する橋のような所は、おそらく東大和市にある村山上貯水池の堤体。
村山貯水池(通称:多摩湖)には上貯水池と下貯水池があるのですが、本作に登場するのは上貯水池の堤体です。
国立東京第一病院
北川(成瀬昌彦)が入院している「関東第一病院」の設定で登場する建物は、国立東京第一病院。
前作『月光仮面 幽霊党の逆襲』で登場したのと同じ病院です。
建物の外観、入口付近が映ります。
主題歌・挿入歌
主題歌
☆「月光仮面は誰でしょう」近藤よし子/キング子鳩会
☆「月光仮面の歌」三船浩
(☆印:OPにクレジットがある曲)
楽曲使用シーン
- 「月光仮面は誰でしょう」
・タイトルバックで流れる。
・岡本宅に遊びに行っていた五郎八(柳谷寛)たちが、歌いながら帰宅する。
・西川(岡譲司)たちに拉致された木の実(黒瀬千代子)を月光仮面が追うシーンで流れる。
・ラスト、月光仮面が去って行くシーンで流れる。 - 「月光仮面の歌」
・月光仮面が白上博士(清水一郎)の前に現れるシーンで流れる。
・終盤、月光仮面が白上博士や松田警部(増田順司)たちの前に現れるシーンで流れる。(インスト)
あの企業・あの商品
SONARE
「SONARE」は、ピアノのブランド。
おそらく国産のブランドと思われます。
キャバレーでバンドが演奏するシーンで、ピアニストがSONAREのピアノを弾いているのが確認できます。
このブランドについてはあまり情報がなく、詳細についてはよくわかりません。
ただ、SONAREブランドのピアノについてネットで検索してみたところ、製造元は日本楽器で、十字屋が販売していた…という情報だけは見つかりました。
その情報を検証し裏付けをとるために参考になりそうな当時の資料を探しているのですが、今のところ、まだ見つけられずにいます。
引き続き、SONAREのピアノに関する資料を探していきたいと思います。
キラリ☆出演者ピックアップ
成瀬昌彦
北川役で出演している成瀬昌彦。
前作『月光仮面 幽霊党の逆襲』では、鈴木博士(齋藤紫香)の助手・藤田を演じていました。
事件に巻き込まれた被害者側だった前作に対して、今回は悪役側ではあるのですが、その悲しい過去は涙を誘います。
ちょっとした役でも妙に印象に残る独特の存在感があって、とても好きな役者です。
成瀬昌彦が演じた役でわたしが気に入っているのは、『警視庁物語 顔のない女』で演じた、アリス化粧品のセールスマン。
役名の通り、ただのセールスマンなんですが(笑)、販売部長役の高橋とよとセットで大好き。
何ともいえない威圧感と威勢のよさがある女部長と、ちょっとオドオドしたセールスマン・成瀬昌彦の組み合わせが絶妙で気に入っています。
【映画レビュー】最後にふさわしい悪・白髪鬼
シリーズ第6作目。
大村文武主演の劇場版「月光仮面」シリーズの最終作にあたります。
出演者を見てみると、山東昭子・岡譲司・齋藤紫香・萩原満・成瀬昌彦・山口勇・潮健児(ノンクレジット)…と、前作と同じような顔ぶれとなっています。
監督は前作と同じく島津昇一、公開日は前作の公開からわずか一週間後なので、前作とほぼ同時進行で撮られたのでしょうかね。
ストーリー展開に関しても、前作と同じような描写がいろいろと出てきますね。
五郎八(柳谷寛)はまた前回と同じようにやらかすし、成瀬昌彦は同じ病院に同じように入院するしで、既視感満載の展開が出てくるのが面白くて、なんか笑ってしまいます。
『悪魔の最後』というタイトルですが、本当の悪魔は別にいた…ということですね。
白上博士(清水一郎)の人生の背後にある物語は、聞くも涙、語るも涙。
同情を禁じ得ません。
白上博士の長男役の梅宮辰夫は、同年、劇場版『遊星王子』『遊星王子 恐怖の宇宙船』でも岡譲司(まぼろし大使役)と対決しています。
本作よりも『遊星王子』の方が公開が先ですが。
本作では、まぼろし大使・岡譲司から反撃をくらったかのような感じで被害に遭います。
『少年探偵団 敵は原子潜航挺』『遊星王子』『遊星王子 恐怖の宇宙船』といった子ども向け作品では主演だった梅宮辰夫ですが、本作では一転、殺され損の脇役といった感じ。
でも、主役のヒーローだけじゃなく、こういう役もやっているのはいいなぁと思いますね。
デビュー初期の特撮作品に出ていた頃の梅宮辰夫、わたしは大好きです。
復讐の鬼と化し、本当の悪に手を下そうとした白上博士は自らも悪に成り下がってしまったわけですが、こういう悲劇的な悪というのは私は結構好きで、肩入れして見てしまいます。
そこに人間の弱さ・愚かさというものが凝縮されているから、共感してしまうのでしょうね。
単なる強欲なだけの悪とはまったく違うのです。
劇場版の白上博士は、このシリーズ最後にふさわしい悪役だったんじゃないかな、と思いますね。