1977年(昭和52年)公開の東映映画『ジャイアンツのこども野球教室』。
「東映まんがまつり」で公開された、児童向けの作品です。
当時の巨人のスター選手たちが続々登場。
作品はストーリー仕立てになっていて、弱小少年野球チームの子どもたちに、巨人の選手たちが丁寧に野球の指導をします。
巨人ファンならずとも野球ファンなら楽しめる、素敵な児童映画です!
作品情報
【時間】24分/カラー
【配給】東映
【監督】福湯通夫
【出演】長島茂雄/王貞治/土井正三/張本勲/堀内恒夫/高田繁/東京讀賣巨人軍全選手/森井信好/土田洋政/鶴来貴司/大沢総一郎/飯田真一郎/小林功/藤木武司/田中和則/大久保純/沢地洋政/伊藤慶子/大泉公孝
【協力】東京讀賣巨人軍
【資料協力】日本テレビ
【衣裳・用具協力】株式会社玉澤スポーツ
あらすじ
結成したばかりの少年野球チーム「リトルジャイアンツ」は、一度も勝ったことがないばかりか、一度も点を取ったことがない。
チームの応援団長である少年・ユウイチ(森井信好)は、巨人軍の長嶋監督や選手たちに「一度コーチしてください」と手紙を出した。
そうしてリトルジャイアンツの子どもたちは、巨人軍の選手から直接指導を受けられる機会を得て…。
ロケ地
宮崎市営野球場
タイトルバックあけに巨人の宮崎キャンプの映像が流れますが、そのキャンプ地となっているのは宮崎市営野球場。
球場が完成したのは1974年(昭和49年)で、翌1975年(昭和50年)~2001年(平成13年)まで、巨人のキャンプで使用されました。
多摩川グラウンド
野球ファンにはおなじみ、巨人の多摩川グラウンド。
劇中に登場する少年野球チーム「リトルジャイアンツ」の子どもたちは、多摩川グラウンドで巨人軍の選手たちから指導を受けます。
主題歌・挿入歌
主題歌
☆「巨人軍の歌」読売巨人軍球団歌
(☆印:EDにクレジットがある曲)
挿入曲
- 「カール王行進曲」カール・ウンラート
- 「旧友」カール・タイケ
- 「ラデツキー行進曲」ヨハン・シュトラウス1世
- 「双頭の鷲の旗の下に」ヨーゼフ・フランツ・ワーグナー
楽曲使用シーン
- 「巨人軍の歌」
・タイトルバックあけ、巨人の宮崎キャンプのシーンで流れる。
・ラスト、子どもたちが走り出すシーン ~ エンドロールで流れる。 - 「カール王行進曲」
多摩川グラウンドでの巨人の練習風景シーンで流れる。
(「リトルジャイアンツ」の子どもたちが多摩川グラウンドにやってきて見学してるシーン。) - 「旧友」
巨人投手陣のブルペン映像 ~ 多摩川グラウンドで堀内恒夫が子どもたちに指導するシーンで流れる。 - 「ラデツキー行進曲」
宮崎キャンプでの巨人選手の守備練習・打撃練習の映像 ~ 多摩川グラウンドで王貞治・張本勲が子どもたちに打撃の指導をするシーンで流れる。 - 「双頭の鷲の旗の下に」
王・張本が子どもたちにバッティング指導をするシーン ~ 巨人選手たちの練習映像のバックで流れる。
MEMO
「巨人軍の歌」は、通称「闘魂こめて」のタイトルでよく知られている、巨人の3代目球団歌。
作詩:椿三平、補作詞:西条八十、作曲:古関裕而。
「闘魂こめて」のオリジナル版は1963年(昭和38年)にリリースされた守屋浩・三鷹淳・若山彰のバージョンですが、本作の劇中で流れているのは、1976年(昭和51年)にリリースされた藤川純一バージョン。
藤川純一が歌っているバージョンのレコードのタイトルは「闘魂こめて ~ 読売巨人軍球団歌」でしたが、本作のEDクレジットでの主題歌の表記は「巨人軍の歌」となっています。
この藤川純一バージョンの「闘魂こめて」、素晴らしくカッコイイです!
爽やかでありながら勇ましさも同居していて、”誇り”といったものが見事に表現されているな…という印象です。
わたしは他球団のファンですが、これまでに聴いた「闘魂こめて」のなかでも、このバージョンが一番好きです。
映画のなかの昭和プロ野球
登場するプロ野球選手・監督
巨人軍の選手たちがわんさかたくさん映像に出てくるのですが、メインで登場するのは、OPのクレジットに名前がある長嶋茂雄・王貞治・土井正三・張本勲・堀内恒夫・高田繁の6人。
(OPクレジットでは、長嶋の名前の表記は「長島茂雄」。)
5人の選手たち&長嶋監督が、弱小少年野球チームの子どもたちに、優しく丁寧に野球の指導を行います。
巨人選手たちによる指導
- 多摩川グラウンドにやってきた「リトルジャイアンツ」の子どもたちの前にまず現れたのは、王・張本の二人。
二人は子どもたちと一緒にランニング。
その後、技術の指導に入る前に、王さんから「道具は大事にしなくちゃいけないよ」というお話があります。 - 次に登場するのは、高田と土井。
「キャッチボールだと思って、簡単だと思ってバカにしちゃダメだぞ」という高田さんの言葉から始まり、丁寧なキャッチボールの指導が行われます。 - その後、堀内さんが登場。
ピッチャーにフォームや握りの指導をします。
球種の解説なんかもあって、なかなかわかりやすい構成になっていると思います。 - ふたたび土井&高田が登場。
土井さんによる守備の動きについての指導が行われたあと、高田さんのノックで実践に移ります。 - そして、王・張本の二人が打撃の指導。
ここでとても印象的だったのは、王さんの一本足打法のフォームをまねて打っていた子どもに対し、張本さんが優しく諭す場面。
まだ基礎が出来ていなくて、体も大人になっていないので、まずは基礎をしっかりと固めることが大事なんだよ…と、丁寧に教えるのでした。 - 最後に長嶋監督が登場。
監督からも、基本がとても大事だという話があり、また野球の話だけにとどまらず、学校の勉強を頑張って、立派な人になるように…という、タメになるお話が。
自己卑下する後ろ向きな子にも、熱い言葉で励ます長嶋監督。
こうして、巨人軍の監督・選手からの指導を受けた子どもたちは、明るい未来に希望を燃やすのでした。
キラリ☆出演者ピックアップ
森井信好
弱小少年野球チーム「リトルジャイアンツ」の応援団長である少年・ユウイチを演じているのが森井信好。
「ピンポンパン」のビッグ・マンモスのメンバーだった森井信好です。
なんというか、もうほんと、超絶美少年!!!ですね。
劇中に登場する少年野球チームの関係者のなかでは、中心的な人物となっています。
熱心な教育ママに縛り付けられている設定?のようですが、最後には自身も野球チームへ入団することができました。
かわいいお顔でお母さんのことを「おふくろ」と呼んじゃったりするアンバランスな感じに、萌える人も多いかもしれませんね。
【映画レビュー】弱小少年野球チーム、憧れの巨人軍の選手たちに学ぶ。
作品タイトルを見て、巨人が開催した野球教室の記録映画なのかと思ったら違った。
ちょっとしたストーリー仕立てになっていて、なかなか面白かったです。
巨人ファンでなくとも、野球ファンならみんな楽しめる映画だと思います。
弱小少年野球チーム「リトルジャイアンツ」は、チームを作ってからまったく勝てず、チームの応援団長である少年が、ジャイアンツの長嶋監督や選手たちに「一度コーチしてください」と手紙を出します。
そうして、子どもたちはジャイアンツの選手たちから直接指導を受ける機会を得るのでした。
巨人のスター選手たちが子どもたちに優しく丁寧に指導をするのですが、画面の前で見ている私もまた、指導を受けているような気分で観ることができて、実に楽しい。
技術の指導に入る前に、まず王さんから「道具は大事にしなくちゃいけない」という話があります。
選手たちの指導のなかで一番印象に残ったのは、上にも書きましたが、張本さんが子どもに打撃の指導をするシーン。
王さんの一本足打法をまねて打とうとしていた子どもに対し、王さんをまねるより、基本をしっかりと固めることが大切であると力説されてました。
全体を通して語られるのは、何よりも基礎が一番大事ということ。
簡単なことだけど、その基本がおろそかにされてしまう。
野球だけでなく何事にも通じるグランドセオリーだと思います。
そして最後に長嶋監督からは、野球だけじゃなく、ちゃんと勉強も頑張りなさいと激励されるのでした。
最近では、引退した元プロ野球選手が医学の道へ進んだり、起業したり、いろんな世界で頑張っている話をたくさん聞くようになりました。
「勉強も頑張りなさい」
この言葉の意味の重さ、しっかりと受け止めたいですね。
そして何よりも素晴らしいのは、裏方さんの存在にもしっかりと触れられていること。
プレーする以前に、それよりももっと大切なことについてもしっかりと教えてくれる、素晴らしい児童映画です。